東洋医学のベースにある2つの考え方 その2「五行」

東洋医学にはベースとなる哲学というべき考え方が2つある。

ひとつは前回説明した“陰陽”で、もうひとつが “五行”だ。東洋医学でからだをどうとらえるかというときの基本になる考え方である。この五行、じつは生活のいろいろなところで使われている。

東洋医学を系統的に正しく理解するための5回目の今回は、この五行についてなるべくわかりやすく解説してみる。

            目次

    1.あらゆるものを5つに分類?!

       1-1.五行ってなに?

       1-2.五行それぞれのイメージ

    2.五行のあいだの関係

       2-1.相生という関係

       2-2.相克という関係

    3.五行を使ってみる

       3-1.五行をタテにみてみる

 

1.あらゆるものを5つに分類?!


1-1.五行ってなに?

 ・あらゆるものを5つに分類

 ひと言でいうと、“五行”とは宇宙に存在するすべてのものを5つの要素に分類するという考え方だ。その5つとは、(モク)・(カ)・(ド)・(コン)・(スイ)。

 この五行を東洋医学で使うとき、基本になるのが五臓で、対応する五臓は肝・心・脾・肺・腎である。

 

・相撲の土俵

 日本の国技といわれてもちょっと困ってしまう相撲だが、土俵には屋根があって、その四隅に房飾りが下がっているのをご存知だろうか?

 あの色は青房が東、赤房が南、白房が西、黒房が北で、五行に由来している。「あれっ、4つしかないじゃない」と思ったあなた、鋭い! あとひとつは中央。五行では中央が土で黄色、それが土俵ということ。納得した?

 

 

1-2.五行それぞれのイメージ

 まずは五行のそれぞれをイメージしてみよう。そうすることでものごとを5つに分類するコツが理解できるようになるからだ。

 

・木~草木が成長するイメージ木

 草木が成長するように、上へ、外へと伸びていくような性質のものをこの行に分類する。季節では春、五臓では肝が入る。

 

・火~炎が燃え上がるイメージ

 炎が燃えさかるようにものを温める性質のもので、これは分かりやすい。季節では夏、五臓では心が入る。

 

・土~土が農作物を育てるイメージ

 大地にタネをまいて収穫することから、ものを生み出し変化させるという性質のものはここ。季節では土用(土用は夏だけではなく、すべての季節にある)、五臓は脾が入る。

 

・金~金属が形を変えるイメージ

 固くて冷たい、収斂(引き締まる)する性質のもの。季節では秋、五臓は肺が入る。水

 

・水~水が低い方へ流れ、潤すイメージ

 湧き出る水のように生命の源、あるいは下方向に流れる性質のもの。季節では冬、五臓は腎が入る。

 

・五行の表

 五行を分類した表を色体表という。ちょっと見てみよう。五時というのは季節のことで、四季を5つに分類するのはちょっと難しい。五気は季節の気候特徴のこと。

 

 

五臓

五色

五方

中央

西

五時

土用(長夏)

五気

湿

 

 ※土用は各季節にあり、長夏は中国に特徴的な季節で夏のあと秋の前にくる。

 

 

2.五行のあいだの関係


 五行のイメージがわかったら、実際にいろいろとつかって世のなかのものを見てみると、これがなかなかおもしろい。それには五行のあいだの関係性が大切だ。大きくみると2つのルールがあるので、ここではそれを説明する。

 

2-1.相生という関係

 右の図を見てほしい。外側の時計回りの矢印が相生関係をあらわしている。相生とは生み出す関係のこと。

 例えば、木は火を生み出す。この場合、“木は火の母”で、“火は木の子”であるという。母子関係ともいわれる。この関係が循環しているわけだ。これを具体的に見てみる。

 

・木がこすれて火を生む(木生火)

・火が燃えて灰ができると土になる(火生土)

・土のなかに金属ができる(土生金)

・金属の表面に水滴がつく(金生水)

・水によって木が育つ(水生木)五行関係図

 

 

2-2.相克という関係

 右の図でこんどは斜めにひとつおきに向いている矢印を見てほしい。これは相克関係といい、“克”(コク)とは“勝つ”という意味である。

 例えば“木は土を克す”という。木が土に勝つという意味だ。木は土のなかに根を張るので土を克す、つまり勝つわけ。それぞれの行はどれかの行に勝ち、どれかの行には負けることになってバランスが取れている。また相生によって生み出されるだけだとバランスがくずれるので、抑制的にはたらくことでバランスをとっている。

 

・木は土中に根を張り栄養を奪う(木克土)

・土は水を吸収し堰き止める(土克水)

・水は火を消す(水克火)

・火は金属を溶かす(火克金)

・金属でできた刃物は木を切る(金克木)

 

 

3.五行を使ってみる


 五行を実際にいろいろとつかって世のなかのものを見てみると、これがなかなかおもしろい。

 

3-1.五行をタテにみてみる

 五行の各行をタテにみていくとおもしろいので、からだに関する表でみてみよう。各行(同じグループ)の要素はそれぞれに関連がある。ある要素に異常があらわれた場合に、同じグループのいずれかの要素が原因となっていたり、いずれかの要素が治療に役立ったりする。

 

・金は肺の行

例えば皮膚にかゆみがある場合、皮(皮膚)は金のグループ(行)に属しているので、ここをタテにみていくと、肺や大腸などの機能低下が原因だという見かたができる。その原因としては、悲しみや憂いという感情が過度になったことなどが可能性として考えられる。また鼻の症状や鼻水などをともなっているかもしれない。治療では乾燥した気候(上の表を参照)に注意が必要で、辛味に属する漢方薬や食物をとるとよいと考えられる。

 

要素

五臓

五腑

小腸

大腸

膀胱

五体

血脈

肌肉

五志

憂・悲

五官

五液

涎(ヨダレ)

涕(ハナミズ)

五味

鹹(シオカライ)

 

 ここに挙げたのはほんの一部だが、東洋医学の診察ではこんなことを考えながら患者さんの症状などを診て治療していくのである。おもしろいでしょ?

 今回は少しとっつきにくい内容だったと思うので、このあたりで終了する。

 最後にキトラ古墳の四方の壁に描かれていた四神の写真を挙げてみよう。

青龍_キトラ古墳朱雀_キトラ古墳

 

 

 

 

 

白虎_キトラ古墳 玄武_キトラ古墳

 東が青龍、南が朱雀(朱は赤のこと)、西が白虎、北が玄武(玄は黒のこと)。ちなみに中央が本日のタイトル写真になっている麒麟だ。この絵は鳥獣戯画のなかのキリン。

 

 

第1回「東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その1

第2回「東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その2

第3回「東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その3

第4回「東洋医学のベースにある2つの考え方 その1

 

次回は陰陽や五行を使ってちょっと脱線、「ほんとうの自分の干支を知っているひとは意外に少ない?」。
12/21ころに公開予定(あくまでも予定!)。

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