東洋医学的日々雑感22 「漢方の大嘘」を読んで

週刊新潮の9/14号と9/21号の2週連続で「漢方の大嘘」と題した記事が掲載されました。
ちょっとショッキングなタイトルですが、今回はこれについて少し書いてみます。

 

1.漢方の実情?!


あなたは漢方薬に対してどんな印象を持っていますか?

副作用がない」「効き目が穏やか」「体質を改善する」などだとしたら、ある意味でそれは間違いです。
その理由については、後で書くことにします。

ところで、最近カタカナ名の変な薬をよく見かけますけれど、
じつはあれはほとんど「隠れ漢方」と呼ばれるものだって知っていましたか?

漢方薬の名前って漢字だらけだし、素人には何に効くのかよく分からないので、
何となく効果をイメージできるようなカタカナにして買いやすくして、
それで売り上げを伸ばそうという魂胆が透けて見えるような気がします。

少しだけ例を挙げてみます。
・コムレケア(小林製薬)=芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)
・ナイシトール(小林製薬)=コッコアポEX(クラシエ)=ココスリム(佐藤製薬)=防風通聖散(ボウフウツウショウサン)
・ビスラットゴールド(小林製薬)=大柴胡湯(ダイサイコトウ)

コムレケアはこむら返り、ナイシトールは内臓脂肪、ビスラットゴールドは更年期脂肪に効果があると(それとなく分かるように)しています。
こうして見てみると、隠れ漢方は小林製薬の得意技なのかもしれません(笑)

これらの「隠れ漢方」に使用されている生薬、組み合わせや配合比率は同じでも、配合されている量が医療用の漢方薬よりも少なめのものが多いようです。
これは、カラダに合わない漢方薬を服用してしまった時の副作用対策のような気がします。
脂肪を落とすのに漢方薬を飲むなんてと思ってしまいますが、まさにこれが日本における漢方の現状なのかもしれません。

前置きが長くなってしまいましたが、そろそろ本題に入りましょう。

 

 

2.「漢方の大嘘」の内容


週刊新潮の記事の主旨はだいたい以下のような内容でした。


・ツムラは医者に漢方の知識をマニュアル化して教えた

・その際に「方証相対」という対症療法的な流派を広めた

・結果的に、知識の浅い専門医(漢方専門認定医)を大量に作った

・処方が固定している既製品のエキス製剤を作ったため、とても重要な「さじ加減」ができない

・上記のような漢方を推し進めた結果、深刻な副作用事案が起こっている


少し説明が必要な部分をフォローしてみます。

1976年以降、148処方の漢方薬が保険適用になったのですが、
実はその時点では大学で漢方を教えているところがなかったそうです。
つまり、漢方を学んだことがある医者がほとんどいなかったにもかかわらず、漢方薬が保険適用になったわけです。

そこで、本来は大学で教えるべき漢方に関する医学教育を、利益を追求すべき企業(つまりツムラ)が代わって行なうことになったわけ。
その時に導入した考え方が「方証相対」という、症状と処方が対応している対症療法みたいなものだったんですね。
しかもツムラはそれをマニュアル化して医者に配ったんです。

本来の東洋医学の考え方では、人を見て、脈診・舌診など総合的に判断して処方するものです。
ですがそんなキチンとした教育をしていたら間に合わないから、手っ取り早く漢方薬を使ってくれる医者を作り上げたかったわけです。

そのために利用したのが、日本東洋医学会が1989年から始めた漢方専門医認定制度です。
「日本東洋医学会の入会金と専門医になるための判定料を払えば専門医になれる」
とツムラの営業担当が宣伝していたなどとも書かれていました。
実にひどい話です。

患者の側からすれば、漢方専門医なら漢方に詳しいと思うのは当然のことですが、
実情は漢方の基本も知らない医者がたくさんいるということなんです。

さらに、ツムラが作った漢方エキス製剤の特徴は、処方がマニュアル化されている点です。
利便性と収益性というのがその大きな理由でしょうが、処方が固定している既製品のため、
いわゆる医者の「さじ加減」ができない薬なんですね。

漢方、あるいは東洋医学の良いところは、その人に合った治療や処方をすること。
これではすべての人にMサイズの服を着なさいと言っているようなもので、東洋医学ではありません。

 

 

3.漢方、東洋医学について思っていること


以前にもこのブログで書きましたが、漢方薬の専門家は誰なんでしょう?
じつは日本の医療システムの中には、漢方の専門家はほとんどいないのが現状なんですね。
それなのに医師なら誰でも保険で漢方薬を出せるというのは、とてもおかしいです。

記事で言われている「大嘘」というのは、私に言わせればツムラだけではなくメディアにも責任があります。
ですが「漢方薬」自体は決して悪くないんです。
何と言っても、約二千年のエビデンスがある医学ですから。

東洋医学と西洋医学は全く視点が違う医学で、だからこそ共存している意味があるんだと思っています。
つまり、西洋医学的な考え方で漢方を使うことには大きな無理があるということなんです。

漢方薬も薬である以上、副作用は必ずあります
間違った使い方をすれば死に至ることもあります。
逆にキチンと使って体に合えば、すぐに大きな効果を見込めるのも事実です。

最近読んだすごく難しかったけどかなり面白かった『「代謝」がわかれば身体がわかる』(大平万里、光文社新書)という本の中にこんな記述がありました。

役に立つ薬理作用のある毒物を「薬」という。

漢方薬でもなんでも、薬は必要な時以外は使わないのが基本ですね。

 

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