東洋医学的日々雑感23「眩(くらら)~北斎の娘~を観て感じたこと」

10月7日に再放送されたNHKの特別ドラマ「眩(くらら)~北斎の娘~」を録画しておいて先日観ました。
原作は直木賞作家の朝井まかて氏の「眩」。
これが期待以上に凄いドラマでした。
感じたことなどを少し書いてみます。
 
画像制作に多少なりとも携わっていた経験を持つものとして、
各カットがため息が出るような感動的な色彩やアングル、照明などで構成されていることに驚き、
制作スタッフの質の高さを感じさせてくれましたが、
それ以上に主演の宮崎あおい(北斎の娘お栄、のちの葛飾応為)、
父であり師である北斎役の長塚京三の演技が光っていて、
久々に観終わってから暫くの間、感動に浸ることができる作品でした。
 
 
葛飾北斎、言わずと知れた江戸後期の浮世絵師ですね。
富嶽三十六景や北斎漫画などが代表作で、世界的にも有名。
LIFE誌が1999年に選んだ「この千年でもっとも重要な功績を残した100人」に日本人で唯一選ばれた人でもあります。
私はベロ藍を使ったあの北斎ブルーにとても惹かれます。
 
そのドラマの中で胸に刺さるセリフがありました。
シーボルトから西洋画の手法による浮世絵の制作を依頼され、
弟子たちが仕上げた絵を前にして、皆で議論する場面でのことです。
弟子たちも娘のお栄もこのレベルの絵を納めることはできないので書き直したいという意見なのですが、
そこで北斎が言うのです。
 
たとえ三流の玄人でも、一流の素人に勝る。
なぜだかわかるか。
こうして恥をしのぶからだ。
己が満足できねぇもんでも、歯ぁ喰いしばって世間の目に晒す。
やっちまったもんをつべこべ悔いる暇があったら、次の仕事にとっとと掛かりやがれ
 
この言葉は胸に刺さりました。
私たち鍼灸治療も同じだからです。
いやすべてのプロはそうあるべきなのかもしれません。
 
私の治療レベルはまだまだ低いということを自覚している自分がいる。
それでもいま目の前にいる患者さんを、いま持っているその低いレベルで治療しなければならない。
自分のレベルが低いことを恥じるくらいなら、さらに高いレベルを常に目指すべきなのです。
私にはそう受け止められました。
北斎のように常にさらなる高みを目指したい! いや、目指すべきだ!!
 
興味を持って調べてみると、北斎には他にも名言がいろいろありました。
次に紹介するのは、臨終の際の言葉です。
 
翁 死に臨み大息し 天我をして十年の命を長らわしめば といい 暫くして更に言いて曰く
天我をして五年の命を保たしめば 真正の画工となるを得べし と言吃りて死す
 
どうでしょう。
「あと十年、いや五年命が長らえればまことの画工になれるのに」
と死の間際に言うことができるその姿勢、自身に対する評価の厳しさ。
見習わなければなりません。
 
 
さらに富嶽百景の跋文にはこう書かれています。
 
己六才より物の形状を写の癖ありて半百の此より数々画図を顕すといえども七十年前画く所は実に取るに足ものなし
七十三才にして稍禽獣虫魚の骨格草木の出生を悟し得たり
故に八十六才にしては益々進み九十才にして猶其奥意を極め一百歳にして正に神妙ならん欤 
百有十歳にしては一点一格にして生るがごとくならん
願くば長寿の君子予言の妄ならざるを見たまふべし 
 
ちょっと訳文を付けておきます。
(私は六歳から物の形状を写し取る癖があり、五十歳の頃から数々の図画を現したとはいえ、七十歳までに描いたものは実に取るに足らぬものばかりである。七十三歳になっていくらかは生き物の骨格や草木の出生を知ることができた。ゆえに、八十六歳になってますます腕は上達し、九十歳ともなると奥義を極め、百歳に至っては正に神妙の域に達するであろうか。百十歳を超えれば一点一格が生きたもののごとく描けるようになろう。願わくば長寿の神様には、このような私の言葉が世迷い言ではないことをご覧いただきたいものだ)
 
これまた自らの目指す絵師としての極みを具体的にイメージして見据え、日々努力していたことを伺える逸話です。
卑近な例で申し訳ありませんが、少し前に読んだランニング本に書いてあったことを思い出しました。
 
平凡なることを、非凡なる努力で継続すること
この言葉の大切さと難しさを感じさせられる今日この頃です。
 
 

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