東洋医学的日々雑感26 「神秘の巨大ネットワーク」を観て、東洋医学の面白さを再認識した話

NHKスペシャルで「シリーズ人体 神秘の巨大ネットワーク」というシリーズが始まりました。
すでにプロローグ、第1、2集の3回が終了しています。
その第1集のタイトルは「”腎臓”が寿命を決める」(2017/10/1放送)。
肝腎要(肝心要とする説もあり)の腎の話ですね。
 
観てみると、その内容は「東洋医学ってやっぱりすごいんじゃない?」と思わせるようなものでした。
もちろん制作者の意図とは少し違うのかもしれませんが、この番組を観て感じたり調べたりしたことをまとめてみることにしました。
ある意味、私の忘備録のような感じですので、興味のある方のみお付き合いください。
今回はかなり長いです(笑)
 

1.内容の紹介


まずは放送を観ていない方のために、簡単に内容を紹介しておきましょう。
じつは私も放送を見逃してしまって、先日オンデマンドで観ました(笑)

・高地トレーニングで鍛えているものは?

腎臓というと泌尿器系の器官のひとつで、血液をろ過し、尿を作るという認識が一般的です。
ところが腎臓は、ひとの寿命をも左右する人体の隠れた要であることがわかってきました。
腎臓は体中に情報を発信しながら、さまざまな臓器の働きをコントロールしているんです。
 
 
例えば、運動選手が持久力を鍛えるためにする高地トレーニング。
これによって鍛えられるのは、じつは腎臓なんです。
 
高地でカラダに酸素が足りなくなると、それを腎臓が察知してEPO(エポ:正式名称エリスロポエチン)という物質を出します。
この物質、「酸素が足りない」という腎臓からのメッセージを全身に伝えるいわゆる“メッセージ物質”です。
EPOが放出されると、血液の流れに乗って全身に広がり、にまで届けられます。
 
骨の中にある骨髄では、酸素を運ぶ赤血球がつくられていますから、EPOのメッセージが届くと赤血球が増産され、効率よくカラダ中に酸素を運べるようになるというわけです。
 

・腎臓は人体ネットワークの要?!

腎臓が出す“メッセージ物質”は他にもあります。
じつは腎臓は様々な“メッセージ物質”を放出することで、全身のいろいろな臓器と情報交換を行っていることもわかってきています。
 
その代表例としては、薬を飲んでも効果がまったくみられない重症の高血圧症の治療です。
高血圧とは無関係にみえる腎臓を手術することで、血圧が正常範囲まで下がるんです。
その理由は、腎臓が血液をろ過して尿をつくる際に、同時に血液の成分調整が行われていたから。
 
腎臓の本当の役割は尿をつくることではなくて、さまざまな臓器から情報を受け取って、血液成分を適正な状態にコントロールする「血液の管理者」だったんです。
これぞまさに「人体ネットワーク」の要ともいうべき存在ですね。
 
ですから、腎臓が異常をきたすとそれが他の臓器に悪影響をもたらすし、逆に他の臓器で異常が起こるとその影響が腎臓に及びます。
そういう意味で腎臓と関連性があるとされる臓器は、心臓、肝臓、肺、脳、腸、骨など多岐に亘っています。 
 

・長寿を決める物質って?

話は変わりますが、いろいろ動物の寿命について、一般的には体が大きい動物ほど長生きだと言われていますよね。
ところが、体が小さいのに長生きする動物もいるんです。
その代表がハダカデバネズミ(約28年)、コウモリ(約30年)、そして人間(約75年)です。(カッコ内は平均的な寿命)
いまのところ、血液中のリンの量が少ないほど長生きするらしいんです。
 
リンは肉や豆類に含まれる大切な栄養素で、不足すれば呼吸不全、心不全などを発症します。
逆に多過ぎれば、骨粗鬆症、動脈硬化を発症します。
 
リンも腎臓が調節していて、腎臓の機能が低下するとリンの調整機能が低下し、老化が加速するようです。
そのメカニズムはまだ解明中らしいのですが、血液中のリンが増えると血管の内側で石灰化が進み、血管が硬くなることがその一因とされています。
 
腎臓はリンの量の絶妙な調節に関して、骨のメッセージを聴いていることも分かっています。
骨は体内のリンの貯蔵庫としてその量を常に監視していて、その増減を腎臓にメッセージとして伝え、腎臓もそれに応じてリンの量を調節するというわけです。
 
 
これってある意味、凄いシステムですよね。
言ってみれば「腎臓の働きと寿命には密接な関係がある」ということになります。
 
ついでながらこのリン、不足よりも過剰摂取しやすい栄養素なんです。
ちなみにリンを含む食品添加物にリン酸塩がありますが、ソーセージやハム、缶詰、調味料、インスタントラーメンなどに多く含まれ、「リン酸Na」と表示されています。
これって、食品の形状や保水性を維持するための結着剤として使用されている場合が多いんですが、他には炭酸飲料に酸味料としても使われています。
 
リンの調節は腎臓がしてくれているとしても、必要以上にリンを過剰摂取しないようにはしたいものですね。
 

・腎臓を守ることの大切さ

腎臓以外の病気でも、腎臓に悪影響を与えることも分かってきました。
先進国の入院患者のじつに5人に1人が急性腎障害(AKI)になっていたという報告があります。
 
このAKIは、腎臓の機能が急激に落ちることをきっかけに多臓器不全を起こして、命にもかかわる深刻な状態のことです。
逆に考えると、腎臓を守りさえすれば救われていた命がたくさんあったことが分かってきたということになります。
AKIの患者数は、ヨーロッパだけで年間20万人にものぼるともいわれています。
 
また、治療のために投与される薬が腎臓に負担をかけていることも、AKIの一因だと指摘されています。
ある意味で、腎臓はもっとも薬の影響を受けやすい場所です。
ですから、余分な薬を飲むことは腎臓に負担をかけるという認識を持った方がいいようです。
 
命を守るために、そして長寿のために、常に腎臓を見守る必要があることが西洋医学の世界で徐々にわかってきています。
このことは、全身の臓器と語り合いその要として機能している腎臓をみつめることで、人体をネットワークとしてとらえる視点を西洋医学が得たと言ってもいいのかもしれません。
 
※参考までに、全8回のタイトルを挙げておきますね。
NHKスペシャルシリーズ「人体 神秘の巨大ネットワーク」
・プロローグ:神秘の巨大ネットワーク
・第1集:”腎臓”が寿命を決める
・第2集:”脂肪と筋肉”の会話がメタボを治す
・第3集:発見!”骨”が若さを呼び覚ます
・第4集:アレルギーのカギは“腸”にあり
・第5集:徹底解剖!ひらめく“脳”の秘密
・第6集:生命誕生・あなたを生んだミクロの会話
・第7集:人体は謎に満ちている
 
 

2.東洋医学の考える”腎”と“腎臓”の比較


それでは、東洋医学における腎の概念と最新の腎臓に関する知見を比較してみましょう。
すると「東洋医学はなかなか鋭いぞ!」ということがわかってきます。
 

・腎は骨・髄・納気を主(ツカサ)どる

まずは高地トレーニングの話です。
酸素が不足すると、その結果として腎臓からEPOという物質が放出され、それが骨に届いて、骨のなかの骨髄でつくられている赤血球を増産し、効率よく酸素が運べるようになる、ということでした。
 
この部分を東洋医学の腎という概念と比較してみます。
東洋医学的には、腎はカラダの器官としては骨、骨髄と関係が深く、さらには肺でする呼吸とは違う“納気”という深い呼吸をつかさどっていると考えられています。
腎が弱ると骨が脆くなる、というような関係性です。
 
これって関連している器官は骨と骨髄でまったく同じですし、「血液に酸素を供給すること=深い呼吸」と考えると、ほぼ同じことを言っているように感じるのは私だけでしょうか?
 
 

・五臓六腑は互いに関連している

次に、腎臓とさまざまな臓器や器官とのつながりの話です。
もともと東洋医学では臓器どうしにはそれぞれ特別な関係性があると考えます。
というより五臓六腑四肢百骸、つまりカラダのすべてはつながっているというとらえ方です。
もちろん心身一元論というスタンスなので、ココロとカラダもつながっています。
 
例えば腎で言えば、肺は腎の母、肝は腎の子、脾は腎を克す(いじめる)、腎は心を克す、膀胱と腎は表裏(親密な関係)などが一般的な他の臓腑との関係性です。
 
先ほどの腎臓と関連があるとされる臓器は心、肝、肺、脳、腸、骨などでしたが、東洋医学が二千年以上前に言っていた臓器とほとんど違いがありませんよね。
これって凄いことだと思いませんか?
 

・腎は精を蔵す

それから寿命の話。
東洋医学では腎という臓は、精を貯蔵していて、この精とはカラダにとって必要な気・血のもとになるものです。
ですから腎は発育・成長・老化ともっとも関係が深い臓とされています。
 
つまり、腎を良い状態に保っておくと老化しずらいし、長生きするということ。
これまた、まったく同じことを言っていますよね。
 面白すぎます(笑) 
 
 

3.人体の不思議と無限の可能性


このように考えてくると、例えば鍼灸でとても重視しているツボや経絡という考え方も、いまにカラダのネットワークをつなぐなんらかの役割を果たしているルート(=経絡)だということや、そのなかでも特に刺激すると効果的な部位(=ツボ)などというふうに、科学的にも認識される日が来るのかもしれないと思えてきます。
 
これってなんだかとってもワクワクしますよね!
 
 
西洋医学では以前は「脳が最高」というとらえ方をしていましたが、いまでは「全身の細胞がある意味で対等である」という考え方に大きくパラダイムシフトしているわけです。
一方で東洋医学は、全身のネットワークという考え方を数千年前に見出していたと言うことができます。
 
しかし「東洋医学はすごい」「いや西洋医学こそ科学だ」などと言う前に、いま自分たちが生きているこのカラダというシステムの不思議に目を向け、その可能性を実感することが大切なんだと、今回あらためて感じさせられました。
 
番組の中でも山中教授が言っていましたが、こんなところまでわかってきたつもりでいても、まだ人体について十分の一も分かっていないのだ、と。
 
以前にも書きましたが、西洋医学的な視点と東洋医学的な視点、このふたつの医学はカラダを180度違う方向性でとらえています。
けれど、だからこそそれぞれの存在意義があるのだと思っています。
まったく違っているというところに留まらずに、それぞれの独特な視点を共有し理解しあうことで、医学の可能性は限りなく広がるのかもしれないと、いま強く思っています。
 
いままでも鍼灸で患者さんを治療することは十分に楽しかったのですが、今後の楽しみがさらに増えた気がします。
それにしても東洋医学ってなかなかステキですよね!
 
今回も長々とお付き合いいただき、ありがとうございます。
 
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