東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その7

 前々回で五臓が終了したので、今回は“六腑”について説明する。五行関係図_臓腑

 六腑とは胆、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦だ。なぜこのような順で並べたかというと、五行の順番だからだ。つまり木・火・土・金・水に対応し(三焦は火に属する)、さらには肝・心・脾・肺・腎(三焦は心包)の五臓に各々が対応する。

 それでは具体的にみていこう。六腑をすべて学ぶので今回はちょっと長い。

 

 目次
1.六腑について
 1-1.消化・吸収をおこなう
 1-2.管状の中空器官
 1-3.下へ移動するのが正常
 1‐4.五臓と表裏一体
2.六腑のはたらきと病
 2-1.胆
 2-2.小腸
 2-3.胃
 2-4.大腸
 2-5.膀胱
 2-6.三焦

 

 

1.六腑について


 まず六腑の概略から復習していこう。

 六腑については第10回で学んだように、食べたり飲んだりしたものを消化・吸収・排泄するための通り道だ。

 五臓は中身がつまった臓器だが、六腑は中が空洞になっている(例外もある)。そこを食べたものがとおりながら、消化・吸収されていくわけ。そのはたらきについて詳しくみてみよう。

 

1-1.消化・吸収をおこなう

 まずは全体のながれを図で説明する。

 

・口から食べたものは…六腑のはたらき

 食べもののことを東洋医学では“水穀”といった。これが口から体内(正確にいうと“体外”だということもすでに説明した)に入る。

 すると食道をとおって胃にたまる。胃は食べものをためる袋という認識だ。

 ここで“腐熟”ということが行われる。これは簡単にいうと、食べものを消化しやすいようにグジュグジュにするということ。

 食べもののなかにある体にとって重要なエッセンス(つまり“水穀の精”)は、このあと脾によって取り出されて、気血や精になる。

 それ以外の食べものはだんだんカスだけになっていく。小腸でさらに精(まだ精が残っている)と濁(これはカスのこと)に分離され、必要な水分を再吸収したあと、さらに固形分は大腸へ送られ大便になり、不必要な水分は膀胱へためられ尿となり、排泄されるのだ。

 

・からだのなかの水の流れ

 これは第9回に説明したが、ここでちょっと思い出しておこう。

水の代謝_腎 身体に必要な水は、基本的に水穀(飲食物)から取りだされる。これは脾によっておこなわれる。水はそのあとからだをめぐるのだが、その通り道とされているのが六腑のひとつの三焦だ。

 脾が取りだした水は三焦を通って“肺”に運ばれ、肺から全身にまかれる。これによってからだのいろいろな部分が潤う。全身をめぐった水は腎に運ばれ、不要なものは膀胱をへて尿として排泄される。

 また、水を取りだしたあとの飲食物は大腸をへて便として排泄される。

 これが東洋医学的にみたからだのなかの水のめぐりだった。覚えていただろうか?

 

 

1-2.管状の中空器官

・六腑は口から肛門までの管?

 これも第10回で書いたが、口から肛門まではからだの外である。

 食べ物には危険がいっぱいなので、無条件に取りこんでしまうと取り返しのつかないことになりかねない。そこで慎重に取りこむためのシステムがこの消化器系の管ということだ。

 からだにとって毒なものだとわかったら、入れてすぐなら逆流させて出す(嘔吐)、ある程度入ってしまったら急いで出す(下痢)わけ。よくできている(笑)

 

 

1-3.下へ移動するのが正常

・ゆっくり下る

 そういう意味で、六腑の中の水穀(食べ物)はゆっくりと消化され、必要なエッセンス(精)を取りこみながら、下に向かっていくのが正常ということになる。

 なぜこんなことをいうかというと、正常なはたらき(これを医学の世界では“生理”という)というのは、裏返せば異常な状態(これを”病理“という)につながるからだ。

 ここでいう異常とは、食べたものがゆっくり下りないことだといえる。詰まってしまったり、早く流れたり、逆流したりする状態のこと。例えると、腸閉塞とか下痢とか嘔吐だ。

 以前に書いた東洋医学的な診断の基本の見かたでいうと、これらの状態は“実”ということになる。

 

 

1-4.五臓と表裏一体

・表裏の臓腑が関連がつよい

 臓腑というのは、五行でわけるとそれぞれ同じ行に属しているものが関連がつよいということになっている。

 例えば肺と大腸。西洋医学的にはまったく関連がない器官だが、東洋医学では関連が強いとみる。大腸は最近注目されている腸内環境ということを考えてみると、わかりやすい。

 肺はからだを守る外側のまもりのようなもの。皮膚も肺の領域だった。腸内環境がよくなると免疫力が上がる(つまり病気になりにくくなる)。アレルギーなどの免疫系の異常は皮膚に現れやすいが、それが肺とつながっているわけだ。

 二千年以上も前に、こんなことに気づいていたとは凄いことではないだろうか?

 そうそう、もちろんお肌の状態を良くしたければ、腸内環境をととのえることが大事。そのためには生きた本物の発酵食を食べるべきだ。

 

 

 

2.六腑のはたらきと病


 つぎに、六腑のひとつひとつについて、簡単にそのはたらきと病をみてみよう。

 

2-1.胆臓腑_鍼灸集成

 胆は肝と表裏関係にあり五行では木に属する腑。はたらきは大きく2つある。

 

・胆汁をためて、出す

 胆汁は肝でつくられるが、それを貯めて、必要に応じて出すのが胆だ。胆汁の役割は消化を助けること。だから消化器系である腑に属しているが、口から肛門までの正規の管状のルートとしてはちょっとはずれる。だから“奇恒の腑”という「形は臓に似て、働きは腑である」にもダブって属しているのだ。

 西洋医学的には、胆汁は食物中の脂肪を乳化して、リパーゼと反応しやすくすることで脂肪の消化吸収を助けている。

 

・決断力にかかわる

 東洋医学では胆汁は精気を含んでいるので、精汁ともよばれる。さらに胆は“決断”と関係が深いと考えられている。胆が弱ると決断力が弱くなるということになる。こころと身体が関連している例のひとつだ。

 ランチのメニューがなかなか決められないあなた、胆が弱っているのでは?

 

 

2-2.小腸小腸

 小腸は心と表裏関係にあり五行では火に属する腑。はたらきは大きく2つある。

 

・食べものを受け入れる

 胃から送られた食べものを受け入れるはたらきを専門的には“受盛”という。小腸では食べもののなかのカスの部分がつくられはじめる。

 

・清と濁にわける

 脾と共同で、食べもののなかのからだに必要な精(清)とカス(専門的には“糟粕”でこちらが濁)に分けるという作業がおこなわれる。

 これらのはたらきがうまくいかないと、正常な便がつくられなかったり、精(気・血の元になる)が取りだせなくなったりする。

 

 

2-3.胃胃

 胃は脾と表裏関係にあり五行では土に属する腑。このふたつの臓腑はとくに親密度が高く、よく“脾胃”というよばれ方をする。はたらきは大きく2つあり、胃は重要な腑なので生理的な特徴もすこしみておこう。

 

・食べものをいったんおさめる

 胃は簡単にいうと、飲食物を一時的におさめる袋だ。だから胃袋などという。このはたらきを専門的には“受納”という。

 

・グジュグジュにする

 上でも述べたように、おさめた飲食物を消化しやすいようにグジュグジュにする。これを“腐熟”という。胃には別名があって「水穀の海」という。水穀、つまり飲食物が海のようにたくさんたまっているところ、というような意味だ。

 

・下におろし、湿気が好き

 胃の生理的な特徴としては、消化物を下降させる役割がある。これがうまくいかないと、お腹が張ったり、気持ちが悪い、嘔吐などがおこる。

 表裏をなす脾は上にあげる働きがあったが、これと協調して、気の流れのバランスをとっているわけだ。

 さらに、胃は六腑の中でもとくに熱が旺盛で、熱化しやすい性質をもっている。胃が熱をもつと食欲が旺盛になり、食べても食べてもお腹が空くなどといった状態になることもある。

 そして、胃が正常にはたらくためには、十分な潤いが必要である。脾と反対に湿気が好きなのだ。

 

 

2-4.大腸大腸

大腸は肺と表裏関係にあり五行では金に属する腑。簡単にいうと食べ物のカスを送るはたらきをしている。

 

・うんこの元をつくる

 食べものから“水殻の精微”を吸収した残りかすのことを“糟粕(ソウハク)”という。これをつくるのが大腸。糟粕はさらに糞便に変化し、肛門から排出されるのはご存知のとおり。

 もちろん大腸のはたらきが悪くなると、便秘、軟便、下痢などの症状がおこる。

 

 

2-5.膀胱

 膀胱は腎と表裏関係にあり五行では水に属する腑。簡単にいうと尿をためておく袋。

膀胱

・尿をためる袋

 からだにとって水分が大切なのは東洋医学でも同じこと。水はからだをめぐって潤しながら、最終的には腎でふたたびめぐるものと、排泄するものとにわけられる。

 排泄する水は尿に変化して膀胱にためられる。尿はある程度までたまると体外へ排泄されるわけだ。

 膀胱の病理としては、頻尿、尿失禁、出が悪いなどさまざまな排尿障害がある。

 

 

2-6.三焦

 三焦は心包と表裏関係にあり五行では火に属する腑。この2つはそれほど結びつきが強くはないが、これを含めると六臓六腑ということになる。

 三焦には2つの概念があるので紹介する。ちょっと変わった腑だ。

 

・「気と水の通路」としての三焦

 からだの組織・器官以外の隙間すべてが三焦であると考えられている。実質的な臓器はなく、はたらきだけに名前がついているので、「名あって形なし」といわれる。

 はたらきとしては、気と水(津液)の通路である。

 

・からだを三つにわける(上焦・中焦・下焦)

 人間の胴体部分を3つにわけて、上から上焦(横隔膜より上)、中焦(横隔膜から臍まで)、下焦(臍より下)という。これも合わせて三焦という。それぞれに属する臓腑は、上焦は心・肺、中焦は脾・胃、下焦は肝・腎・小腸・大腸・膀胱である。

 

 

第1回「東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その1

第2回「東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その2

第3回「東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その3

第4回「東洋医学のベースにある2つの考え方 その1

第5回「東洋医学のベースにある2つの考え方 その2

第6回「ほんとうの自分の干支を知っているひとは意外に少ない?!

第7回「東洋医学を正しく理解するために絶対に知っておくべき気血水のはなし その1

第8回「東洋医学を正しく理解するために絶対に知っておくべき気血水のはなし その2

第9回「東洋医学を正しく理解するために絶対に知っておくべき気血水のはなし その3

第10回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その1

第11回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その2

第12回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その3

第13回「東洋医学エピソードシリーズ1「鍼灸がこんなことに効くって知ってました?」

第14回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その4

第15回「東洋医学エピソードシリーズ2「肺癌末期の女性患者について」

第16回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その5

第17回「東洋医学エピソードシリーズ3「サンフランのエイズ患者」

第18回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その5

第19回「東洋医学エピソードシリーズ4「家内の胃の痛み」

 

次回の「東洋医学エピソードシリーズ5「拒食症」」。
4/4ころに公開予定。

TOPに移動

Back to Top ↑