東洋医学のツボをはずさないために その1

前々回で「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑」シリーズが終了したので、今回からは「東洋医学のツボをはずさないために」と称して、経絡と経穴を始めることにする。

気血水や臓腑とならんで、経絡とその上に存在するツボは、東洋医学的に身体をみる上でとても大切なものだ。

雑誌や書籍でもよく紹介されるツボや経絡について正しい理解を深めるために、しばらくおつきあい願いたい。

 

    目次
1.経絡ってなに?
 1-1.『黄帝内経』に書かれていること
 1-2.気が流れているから生きている
2.経絡のはたらき
 2-1.気血が流れている
 2-2.病邪が伝わる
 2-3.治療効果が伝わる
3.経絡のしくみ
 3-1.経脈と絡脈
 3-2.名前のルール
 3-3.陰経と陽経
 3‐4.十二正経の流れ

 

1.経絡ってなに?


 まずは、経絡とはなにかということから説明をはじめる。

 

1-1.『黄帝内経』に書かれていること

 経脈がどんなものなのか、東洋医学の有名な古典である『黄帝内経』の「霊枢」に次のような記述があるので、まずは見てほしい。 ※“経絡”と“経脈”の違いについては後述する

 

・「不可不通(通ぜざるべからず)」2015-12-13 23.23.07

「經脉者、所以能決死生、處百病、調虚實、不可不通」

(『霊枢』経脈篇第十)

(経脈というものは、死ぬか生きるかを決め、いろいろな病を治し、虚実を調えるものなので、通じていなければならない)

 

 経脈は流れがよくないといけない、と書かれている。

 では中にはなにが流れているかというと、“気血”である。つまりここでいわれているのは、経脈のなかを気血がスムーズに流れていることが大切だということだ。

 

 

1-2.気が流れているから生きている

 このことは第3回に説明したが、ここで思い出すためにもう一度引用しておこう。

 死んだ者に対する西洋医学と東洋医学の考え方の違いについて説明した部分だ。

 

—————————————————————————————————————————————–

古代の中国のひとびとは…(中略)…生きて動いている人とこの動かない物体との違いは何かを考えたのだ。

その答えが“気”である。気が流れているから生きていて、気が散逸したから死んでしまった。そう考えたのだ。

そこから気が流れるルートとしての経絡や気の出入りするポイントとしてのツボをみつけた。その目のつけどころがおもしろい。

—————————————————————————————————————————————–

 

中国の風景1 死体と生きた人間の違いは、気が流れているかどうかだと考えた古代の中国人たちは、次に気が流れているルートについて調べ始めたということだ。

 そこでいろいろと調べてみると、気の流れるルートにはからだに何種類もあることがわかってきた。さらにそれぞれのルートは特定の臓腑と結びつきが強く、すべては一本の輪のようにつながっていることも分かった。これが“経絡説”である。

 まだだれも見た者がいないので、「説」となっている。

 だが、この説を使ってからだを治療するとうまくいくことが、数千年もの経験の積み重ねで知られているから、いまだに使われているというわけ。

 事実、鍼灸学校で習い、国家試験にも出題される経脈が流れているルート(これを専門用語で「流注(ルチュウ)」という)は、いまでも基本的には約二千年前に書かれたといわれる『黄帝内経』の記述と同じなのだ。

 なんだか楽しくなってこないだろうか?

 

 気が流れているのは分かったが、血はどうした? と思っている方が少なからずいるだろう。

 それに答えておこう。じつは「脈」という字は、もともとは血管という意味なのだ。つまりなかを血が流れている管のこと。その脈という字を気が流れているルートとしても使うようになったわけだから、経脈という概念には血が流れているという考え方も含んでいるので、「気血が流れている」というわけなのだ。

 

 

 

2.経絡のはたらき


 つぎに、経絡のはたらきについてみていく。

 経絡は臓腑と体表やからだの各部を連絡する役割をもっている。

 この役割によって、臓腑はからだの奥深くにあっても経絡を通じて気血が供給されたり、あるいはこのルートを使って病邪がからだの中まで伝わったり、さらには、体表からの治療の効果が体内にまで発揮されたりする。

 また逆に、からだの奥に不調がある場合、その反応が経絡を通じて体表にもたらされたりもするので、鍼灸治療などでは体表からからだのなかの状態を推察することが可能になるのだ。

 

2-1.気血が流れている

 身体にとって必要な気血は、経絡をとおってからだの各部や奥深くにある臓腑へと送られる。これがスムーズにいかなくなると臓腑などに不調が生じるというのは、上述したとおりだ。

 

 

2-2.病邪が伝わる

 9bad35962e0743cf521bfa73a4d5993b_s経絡のはたらきにはいろいろあり、よいことだけではない。

 東洋医学的に病気の原因になるものついてはまだ学んでいないが、そのうちのひとつに“病邪”というものがある。

 たとえば風邪。ふつうは「かぜ」と読むが、東洋医学的には「ふうじゃ」と読む。つまり風の邪気のこと。外から入ってくるから“外邪”ともいう。

 こういった邪気は、経絡を伝わって侵入したりする。経絡はそのルートにもなるので厄介だ。

 

 

 

2-3.治療の効果が伝わる

 臓腑がからだにとって大切なものであり、東洋医学でからだを診るときの中心的な存在であることはこれまで学んできた。

 しかし臓腑はからだの奥深くにあるため、直接に触れることができない。そこで役に立つのがこの経絡だ。体表と臓腑をつないでいる経絡を刺激することで、臓腑の不調を治すことが可能になる。これが治療効果が伝わるという意味だ。

 特に体表にあるツボ(詳しくは後述)は経絡の上にあって、そこを刺激することで経絡を通じてからだの中にまで治療効果が及ぶことになるわけだ。

 

 

 

3.経絡のしくみ


 つぎに、経絡のしくみについてみていく。

 

3-1.経脈と絡脈

 まず“経絡”ということばについて。これは経脈と絡脈を合わせた呼び名のこと。

 「経」とは「たて糸」という意味で、からだのなかを上下に縦に流れているメインの気血の流れが“経脈”だ。

 一方の「絡」とは「つなぐ」とか「まとう」という意味。経脈と経脈をつなぐ役割をもった流れが“絡脈”だ。

 

 

3-2.名前のルール

 経絡は経脈と絡脈からなっていて、経脈には正経と奇経がある。

 正経というのは正式なというような意味で、つまり正規の気血の流れ道ということ。奇経というのは別系統の経脈といった意味だ。正経は12本あり、六臓六腑に対応していて、奇経は8本あり、臓腑とは直接には結びついていない。

 十二正経の名前にはルールがある。最初の経脈である「手の太陰肺経」を例に説明する。

 右図をみてほしい。 経脈の名前のルール

 ❶はじめに、その経脈がおもに通っている部位がくる。ここは“手”または“足”になる。

 ❷つぎに、陰陽の区分がくる。ここに当てはまるのは3つの陰(太陰・少陰・厥陰)または3つの陽(太陽・少陽・陽明)で、陰陽の量的な違いをあらわしている。

 ❸さいごに、その経脈ともっとも関係が深い六臓六腑の名前がくる。ちなみに、陰の経脈ではここに臓がきて、陽の経脈では腑がくる。

 

 

3-3.陰経と陽経

 陰の経脈と陽の経脈が流れているからだの部位はどこかというと、両手、両足を地面につけて四つん這いになったときに、上から陽が射しているとすると、陽があたる部分が陽、日陰になる部分が陰と考えるとほぼ正解だ。

 背中は陽だし、お腹は陰、手のひら側は陰で、手の甲側は陽となる。脚はちょっと複雑で、腑足の甲側の内側が陰で、膝の裏側から外側にかけてが陽になる。

 それぞれ陰の側には陰の経脈が、陽の側には陽の経脈が流れているわけ。

 

 

3‐4.十二正経の流れ

 さいごに、重要な十二正経の名前と流れている順を図を見ながら説明する。十二正経の流れ

 12本の経脈は上図のようにつながっていて、それぞれどこで接続するかも記してある。経脈の名前や流れる方向などは、長い歴史をへて、現在のように12本がひとつの輪のように順番に連なっているという結論にいたっているようだ。

 それぞれの経脈のあらましについては、後日詳細を説明する。

 

 

 

第1回「東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その1

第2回「東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その2

第3回「東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その3

第4回「東洋医学のベースにある2つの考え方 その1

第5回「東洋医学のベースにある2つの考え方 その2

第6回「ほんとうの自分の干支を知っているひとは意外に少ない?!

第7回「東洋医学を正しく理解するために絶対に知っておくべき気血水のはなし その1

第8回「東洋医学を正しく理解するために絶対に知っておくべき気血水のはなし その2

第9回「東洋医学を正しく理解するために絶対に知っておくべき気血水のはなし その3

第10回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その1

第11回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その2

第12回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その3

第13回「東洋医学エピソードシリーズ1「鍼灸がこんなことに効くって知ってました?」

第14回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その4

第15回「東洋医学エピソードシリーズ2「肺癌末期の女性患者について」

第16回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その5

第17回「東洋医学エピソードシリーズ3「サンフランのエイズ患者」

第18回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その6

第19回「東洋医学エピソードシリーズ4「家内の胃の痛み」

第20回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その7

第21回「東洋医学エピソードシリーズ5「拒食症」

 

次回は「東洋医学エピソードシリーズ6「足首のねん挫」」。
4/18ころに公開予定。

TOPに移動

Back to Top ↑