東洋医学のツボをはずさないために その3

 

「東洋医学のツボをはずさないために」のその3。今回からは14本の代表的な経脈について少し具体的に学んでいく。

経脈に関する各論第1回目の今回は手太陰肺経と手陽明大腸経の2本について見てみる。

 

     目次
1.経脈ってどこを通ってるの?
 1-1.どのくらいの深さ?
 1-2.気血が流れている量は?
 1-3.臓腑とつながってる?
2.肺と大腸にかかわる経脈
 2-1.手の太陰肺経
 2-2.手の陽明大腸経

 

 

1.経脈ってどこを通っているの?


 まずは、経脈がどこを通っているかということから説明をはじめる。

 これには、流れているルートと深さの2つの問題がある。

 

1-1.どのくらいの深さ?

 ルートについては後で詳述するので、まずは経脈がどのくらいの深さを流れているかについて見てみよう。

 書かれているのは『霊枢』という古典の経水篇(12)である。ここには、各経脈を刺すときにどのくらいの深さまで刺せばいいかが書かれている。このことはつまり、経脈が流れている深さを示していると見てよい。

 

・経脈の深さ

 足の経脈6本と手の経脈に分けて記述されている。

 

   足陽明(胃経)・・・六分

   足太陽(膀胱経)・・・五分

   足少陽(胆経)・・・四分

   足太陰(脾経)・・・三分

   足少陰(腎経)・・・二分

   足厥陰(肝経)・・・一分

   手之陰陽(肺経・心包経・心経・大腸経・三焦経・小腸経)・・・二分

 

 足陽明胃経の六分から足厥陰肝経の一分まで、それぞれ異なった深さを流れていることになっている。よく考えてみるとこれはちょっと大雑把な言いかたで、経脈のなかでも部位によって深くなったり浅くなったりしているハズである。

 尺・寸・分という単位はほとんどお目にかかることがないと思うが、鍼灸の世界では意外とよく使う。

 一分とは、いまの長さでいうと約2.3mm(後漢には『黄帝内経』が成立していたと考えて、当時の度量衡を現在の長さに換算すると)なので、2.3~13.8mmの深さを流れているということになる。手の経脈はすべて4.6mm。

 となると、深さに応じてツボなどを押すときの強さ(深さ)を変えた方がイイかもしれない。

 

 

1-2.気血が流れている量は?

 経脈のなかには気血が流れているといわれるが、その量の多少はこれまた経脈ごとに異なる。書かれているのは、『素問』血気形志篇(42)だ。

 

・経脈のなかを流れる気血の多少

気血の量に関する記述は、量が多いか少ないかという単純な記載しかない。表にしてみるとこんな感じになる。(カッコ内は『鍼灸甲乙経』という別の古典での記載が異なるもの)

 

経脈名

太陽

少陽

陽明

少陰

厥陰

太陰

少(多)

多(少)

 

 気や血が多い経脈は、ツボを押したり、経脈のラインをこすったりするときに、多少強めでも構わないと解釈してもイイだろう。

 

 

1-3.臓腑とつながっている?十二正経の流れ

 経脈の名前には臓腑名がついている。これはその経脈ともっとも関連が深い臓腑だということは、以前学んだ。経脈に関してはここがとても大切。

 経脈は2つずつセットになっている。この組合せは関連の強い臓と腑になっている。

 例えば、手の太陰肺経と手の陽明大腸経の場合、肺と大腸が関連の強い臓腑だ。西洋医学的にはまったくといっていいほど関連性が見えないが、東洋医学的には肺と大腸は結びつきが強く、互いに影響し合う関係になっている。

 使い方としては、肺の状態を反映する皮膚は大腸の状態(腸内環境といっても良い)が良好だと色・ツヤが良くなる、といった感じ。逆に便秘のように大腸の状態が悪いと、肌は荒れるというわけだ。

 陰陽でいうと、臓は陰で腑は陽になる。

 

 

 

2.肺と大腸にかかわる経脈


 

 いよいよ具体的な経脈をみていくことにする。今回は手の太陰肺経と手の陽明大腸経の2本を紹介する。

経脈の考え方の基本のひとつに、12本の経脈がひとつの輪のようにつながっているというものがある(上図を参照)。その最初にくるのが手太陰肺経で、次が手陽明大腸経だ。

またそれぞれの経脈にはツボを結んだ体表のルートと、臓腑とつながっている体内のルートの2つがある。

体内の関連する臓腑や器官の病も、同じ経脈の体表のツボを刺激することで治すことができると考える根拠になっている。

 

2-1.手太陰肺経手太陰肺経

 手の太陰肺経の流れているルートは右図のとおり。赤いラインがツボを結んだルートだ。これ以外に体内のルートもある。

 肺の経脈が最初に起こる場所は“中焦”といって胃のあたり。そのあと大腸、横隔膜、肺をとおって脇の下から体表に出てくる。

 体表のツボを結ぶラインは腕の手のひら側の親指側をとおり、最後のツボは手の親指の爪の生え際の角、右手の母指でいえばこの位置になる(下図)。

 経脈に関しては流れの方向も大切で、手太陰肺経は体幹部から指先に向かって流れている。流れに沿ってなでてあげるのもいいだろう。

井穴

 

 

 

 

 

 

2-2.手の陽明大腸経

 手陽明大腸経の流れているラインは下図のとおり。緑色のラインが体表のツボをむすんだラインだ。手太陽小腸経

 上述した手太陰肺経の流れを受けて、示指の爪の角から起こり、手の甲側の親指側のラインを肩まで上がる。鎖骨の上のくぼみから体内へ入るルートと顔へと上がるルートに分かれ、顔のルートは頬から下の歯をとおり、反対側の鼻の横で終わる。一方、体内のルートは鎖骨の上のくぼみから肺、横隔膜、大腸へとつらなる。

 歯をとおっているので、この経脈上にある“合谷”という有名なツボは、歯の痛みに効果があるのだ。

 

 

 

 

 

 

2-3.古典にある経脈図

 最後に古典にある経脈図を載せておく。

はじめが「陰手総図」で、次が「陽手総図」。

 陰手総図陽手総図

 明の時代の『類經図翼』という古典にある図で、手に関係する陰の経脈と陽の経脈をまとめたもの。

 骨も書かれており、なかなかに味わい深い。

 手の陰経、陽経のそれぞれがどのような間隔で平行して流れているかの参考にしてほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 次のふたつは経脈ごとの図で、こんな雰囲気の図は業界ではよく見かける。手陽明大腸経_十四経発揮俗解手太陰肺経_十四経発揮俗解

 江戸時代の『十四経発揮俗解』という本のもので、これもまたいい雰囲気の経絡図だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

第1回「東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その1

第2回「東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その2

第3回「東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その3

第4回「東洋医学のベースにある2つの考え方 その1

第5回「東洋医学のベースにある2つの考え方 その2

第6回「ほんとうの自分の干支を知っているひとは意外に少ない?!

第7回「東洋医学を正しく理解するために絶対に知っておくべき気血水のはなし その1

第8回「東洋医学を正しく理解するために絶対に知っておくべき気血水のはなし その2

第9回「東洋医学を正しく理解するために絶対に知っておくべき気血水のはなし その3

第10回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その1

第11回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その2

第12回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その3

第13回「東洋医学エピソードシリーズ1「鍼灸がこんなことに効くって知ってました?」

第14回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その4

第15回「東洋医学エピソードシリーズ2「肺癌末期の女性患者について」

第16回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その5

第17回「東洋医学エピソードシリーズ3「サンフランのエイズ患者」

第18回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その6

第19回「東洋医学エピソードシリーズ4「家内の胃の痛み」

第20回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その7

第21回「東洋医学エピソードシリーズ5「拒食症」

第22回「東洋医学のツボをはずさないために その1 経絡

第23回「東洋医学エピソードシリーズ6「ねん挫」

第24回「東洋医学のツボをはずさないために その2 ツボ

第25回「東洋医学エピソードシリーズ7「梅の種」

 

次回は「東洋医学エピソードシリーズ8「裏内庭の灸」」
5/23ころに公開予定。

TOPに移動

Back to Top ↑