東洋医学のツボをはずさないために その7

 

 「東洋医学のツボをはずさないために」のその7の今回は手の厥陰心包経と手の少陽三焦経の2本について見てみる。

 この2本の経脈と関連が深い臓(心包)と腑(三焦)は表裏の関係にあって、結びつきが強いと考えられている。だが、このふたつの臓腑はちょっと不思議だ。

 そのあたりも含めて見ていくことにする。

 

      目次
1.心包と三焦にかかわる経脈
 1-1.手の厥陰心包経
 1-2.心包について
 1-3.手の少陽三焦経
 1-4.三焦について
 1-5.古典にある経脈図

 

1.心包と三焦にかかわる経脈


 

 今回は手の厥陰心包経と手の少陽三焦経の2本を紹介する。

 このふたつの経脈にかかわる臓腑である心包と三焦は、五行では同じ「火」の行に属していて、陰陽の関係になっている。

 前々回に出てきた心は五行では火に属していたが、心包も同じ行に属する。では心包はなにかというと、心を包んでいる家来のようなもので、心は君主であるという関係。三焦についてはかなり複雑なので後述する。

 

 実はこのふたつの臓腑には共通点がある。「有名無形」であるということ。つまり名はあるが形がない、機能だけの臓腑だということだ。

 以前に、古代中国人はしっかりと解剖をしていて、その内容を正確に記述していたと書いた。それなのに形のない臓腑をつくったというところが、実に東洋医学的である。実態だけでは説明できないことを、このふたつの臓腑を使ってあいまいに説明する。ここがある意味でオモシロイと思う。

 

 また臓腑の総数は、この心包と三焦を含めると六臓六腑になる。いわゆる五臓六腑と違っていて、なんとなく違和感がある。このあたりについても少し説明を加えよう。

 1973年に、中国の長沙というところで発見された漢代の墓である馬王堆から『足臂十一脈灸經』と『陰陽十一脈灸経』という経脈に関する書物が出土した。これは帛書(ハクショ)といって布に書かれた書物だが、ここには心包経が書かれていない。

 これらの書物は『黄帝内経』よりも古いので、経脈説が完成して経脈の総数が十二になる前の段階だと考えられている。ただし、十一だと五臓六腑、つまり五+六=十一で納得できる。

 十二になったのには全体的な整合性という考えが働いたのだろうと考えるのが一般的だ。手足で二、陰陽は二ではなく三陰三陽(これは天地人という考え方からきている)で六、二×六=十二となる。三×二×二=十二でもよい。

 となると、最後に帳尻を合わせるように作られた手の厥陰心包経は、どうしてもあまり効果のない経脈のように考えられてしまうが、実際に使ってみるとこれが結構使える経脈なのだからこれまた不思議である。

 

 

手厥陰心包経

1-1.手の厥陰心包経

 手の厥陰心包経の流れているルートはシンプルで、右図のとおり。この経脈のツボの数はもっとも少なく9穴。

 ピンク色のラインがツボを結んだルートだ。上肢の手掌側をとおっている。

 心包経は腎経から脈気を受けて胸に起こり、心包、三焦とつながっている。支脈は胸から上腕の前面、肘、前腕のほぼ真ん中をとおり、手掌を経て、中指の先端中央で終わる。

 経脈の流れる方向は、体幹から手の指先へと向かっている。

 

 

1-2.心包について

 心包とは上述したように心を守るはたらきがある。そういう意味では、大変大きな役割を担っている。

 ただし、実際に使ってみると、心に関わること以外にも喉や胃などに関係する症状を治す効果があることがわかる。たとえば乗り物酔いなどにも効く。喉に骨が刺さったときにも効くツボがある。心に関係する症状以外にも使える経脈なのだ。

 また日本の伝統系の流派などでは、心経には鍼を刺さないというところもある。これは、心は君主なのだからその経にむやみに鍼を刺してはならないということらしい。代わりに使うのが心包経ということになる。

 最後に十二経脈に加えられたわりには、重宝する経脈である。

 

 

 

1-3.手の少陽三焦経手少陽三焦経

 手の少陽三焦経の流れているラインは右図のとおり。薄緑色のラインが体表のツボをむすんだラインだ。

 上述した手の厥陰心包経の流れを受けて、薬指内端から起こり、手背側の前腕、肘、上腕から肩に上り、鎖骨の上のくぼみから胸に入り、心包、三焦とつながる。

 胸から別れた支脈は、うなじから耳の後を回ってまなじりで終わる。

 経脈の流れる方向は手の指先から体幹・頭部の方向にむかっている。

 

 

1-4.三焦について

 以前(第20回)の五臓六腑の説明のところでも書いたが、三焦という腑には2つの意味が混在している。ちょっと変わった腑だ。

 

 ひとつ目は、「気と水の通路」としての三焦である。

 からだの組織・器官以外の隙間すべてが三焦であると考え、そこを気と水(津液)の通るわけだ。だから特定の形のある腑ではないということは、納得できる。

三焦_類経図翼

 

 ふたつ目が、「からだを三つにわける」わけ方のこと。

 人間のからだを3つにわけて、上から上焦(横隔膜より上)、中焦(横隔膜から臍まで)、下焦(臍より下)という。

 これは手首の脈の見たかに応用しても興味深い。

 

 三焦については最後に図を載せておこう。水の代謝全般をつかさどっている腎とのかかわりが見られるところもすばらしい。

 

 

1-5.古典にある経脈図

 最後に古典にある経脈図を載せておく。

 経脈ごとの図で、いずれも『類經図翼』にある図だ。

手厥陰心包経_類経図翼

手少陽三焦経_類経図翼

 

 

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次回は「東洋医学エピソードシリーズ12「鍼灸のプラス効果」」

8/1ころに公開予定。

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