東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その2

古地図

現代の日本において“東洋医学”という言葉はあたりまえのように使われているが、皆さんはその意味を正確に知っているだろうか?

 「漢方」と「鍼灸」と「東洋医学」の関係がどうなっているかご存じだろうか?

2回目の今回はそのあたりについてなるべくわかりやすく解説してみる。これを読めば漢方や鍼灸を受診するときの参考にもなるはずだ。

               目次     

     1.そもそも“東洋医学”ってどこの医学?

        1-1.起源は“古代中国”

        1-2.盛んなのは中国、韓国、日本

     2.日本の東洋医学の特徴

        2-1.5~6世紀頃には伝来

        2-2.“蘭方”と“漢方”

        2-3.日本の東洋医学の特徴

 

1.そもそも“東洋医学”ってどこの医学?


 これについてはほとんどの方が中国と答えるだろう。これはある意味で正解だが、ある意味では少し違っている。その理由を詳しく説明しよう。

1-1.起源は“古代中国”素問上古天真論_画像

中国では清以降、「東洋」とは日本を指す言葉として使われている。日本でいう東洋を意味する中国語は「東方」である。

一方、日本では「西洋」に対して「東洋」という。西洋とは欧米諸国のことを指す。したがって西洋医学は正確には「西洋近代医学」のことで、東洋医学は中国を起源とする「東アジアの伝統医学」のことを指す。

※西洋医学と東洋医学の違いは前回の投稿を参照

 

・アジア各地の伝統医学(広義の「東洋医学」ともいえる)

また広い意味で東洋というとインドやチベット、さらにイスラムまで含める場合もある。そうなると次の1)から4)くらいまで東洋医学といえることになる。

 1)ユナニ医学:イスラムの伝統医学で、ギリシャ、ローマの医学が基本になっている。

 2)アーユルヴェーダ:インドの伝統医学である。知っている方も多いだろう。

 3)チベット医学:中国やインドの影響を受けたチベットの医学である。

 4)中国伝統医学:古代中国に発生した医学理論・技術で、日本では一般的に「東洋医学」とよばれる。約2000年前には体系立った医学として成立していた。

 

・東洋医学の中身

 東洋医学に含まれる治療方法にはいろいろある。“湯液(トウエキ)”(いわゆる漢方薬をつかった薬物療法のこと)、“鍼灸”、“手技療法”(あん摩のようなもの)、“気功”などである。本来はこれらを患者の症状・状態に合わせて適宜使別ける。

 現在、いろいろな国で行われている東洋医学は、最低でも湯液と鍼灸が組み合わさった資格になっているが、日本では歴史的な経緯もあり“鍼灸師”という特殊な資格制度ができあがったのだ。

 

・医学の分類

 こだわる必要はあまりないが、医学の分類は❶伝統医学と❷現代医学とするのが一般的であり、現在の日本の分類とは違う。百味箪笥

この分類においては、東洋医学は❶の伝統医学の中のひとつに位置付けられるし、現代に行われている医学を「現代医学」というなら、東洋医学もまた現代医学ということもできる。

 なんだかわかりにくくなってしまって、このブログの“わかりやすい”という方針に反しているので元に戻そう。

 結局なにが言いたいかというと、日本では中国伝統医学が独自の発展をし、中国で現在おこなわれている伝統医学(これを中医学という)とはかなり違うものになっているということだ。

 

 

1-2.盛んなのは中国、韓国、日本

 東洋医学は中国が起源なので、その周辺国へと伝わった。その代表が朝鮮半島と日本である。当然のように現在でもこの3つの地域で盛んである。ツボの位置を統一する会議が2006年までの3年間WHO主体で行われたが、その中心となったのも中国、韓国、日本の3ヶ国であった。

 

・中国の東洋医学(中医学)

 現在の中国では「中医学」という形で実践されている。中華人民共和国成立後に伝統医学の復興がおこなわれ、伝統的な医術を体系的に再編・統合してできたのがこの中医学である。全国で統一して教えることができる教科書をつくったわけだ。現代医学を導入する余裕がなかったというのもその理由のひとつだろう。

現在、世界の各国で行われている東洋医学は“Traditional Chinese Medicine(TCM)”とよばれ、この中医学理論にもとづくものがメジャーであるのは当然のこと。

 

・韓国の東洋医学(韓医学)cyangumu

 韓国にも古くから伝わっていたが、現在は「韓医学」という形で実践され、例えば漢方薬は韓医しか出せないし、専門の大学が多数あり、基本的には保険の適用となっているなど
西洋医学と同等の地位を獲得して、日本などよりひろく利用されている。一時期、韓国女性の結婚したい職業No1は“韓医”だったとか。

 

 

2.日本の東洋医学の特徴


 本日の内容のキモはここである。

中国を起源とする中国伝統医学=東洋医学はかなり早い時期に日本に伝わり、日本の文化、風土の影響を受けてさまざまに変化して現代にいたっている。だから本場の中国のそれとはかなり違うものになっているのだ。そのあたりについて少し説明を加えよう。

 

2-1.5~6世紀頃には伝来腹証奇覧_小柴胡湯之証

 東洋医学は5~6世紀頃には日本に伝来している。かなり早い段階で伝わっている。そこからお互いに交流を重ねながら日本独特のものへと変化していった。

 例えば、鍼をなるべく痛みなく刺すための道具に管をつかう方法(管鍼法)があるが、これは江戸時代の日本で発明されたもの。漢方薬の処方のしかたでも、やはり江戸時代にお腹の状態に応じた処方のしかたがつくられた。右がその代表的な書物である『腹証奇覧』である。これも日本独自の方法である。逆にいうとお腹も脈も診ないで漢方薬を出すのはニセモノかもしれない?

2-2.“蘭方”と“漢方”

 江戸時代に「蘭方」(オランダ医学)が伝わり、それと区別するため東洋医学は「漢方」と呼ばれるようになった。また日本古来の医学は「和方」とよぶ。“漢”は中国の有名な王朝名だからだ。

 そこからさらに東洋医学のなかの薬物療法を漢方とよぶようになったので、現在では漢方というと湯液治療を指す。

 

2-3.日本の東洋医学の特徴

・資格制度

 日本の現在の医療制度では医師はある意味で万能である。医学的効果がそうかどうかはさておき、資格制度的にはそうなっている。例えば、東洋医学の勉強をほとんどしていなくても漢方薬を処方できる。不思議な制度だ。ここでは東洋医学関連の日本の資格について説明しよう。

 

・漢方薬の専門家ってだれ?

 医師は前述したように漢方薬を処方できる。薬剤師も処方に関しては同じ。生薬

 ただし、漢方薬というのは本来は患者さんの体質、病の位置や性質、原因などを総合的に判断(これを証という)して、生薬(天然の薬効をもった素材)を組み合わせて処方するもの。だから西洋医学的に同じ病名でもまったくちがう漢方薬を処方することは多々ある。これにはかなり高度な知識と臨床経験が必要であるのはいうまでもない。

 したがって、いくら資格があっても脈も診なければ腹も触らないような医師・薬剤師の出す漢方薬は信用できない。

さらにいうと、漢方薬は湯液といわれるように基本的には煎じて飲むもの。飲むたびに生薬を煎じる形がベストだがこれは高い。最低でもエキス剤(顆粒になっているもの)はお湯で溶かして飲むべきだ。

 

・鍼灸もちょっと違う!

 日本の風土、日本人の体質に合った医学に変化した結果、日本の鍼には次のような特徴がある。

❶細い鍼を使う管鍼法

 細い鍼を使用して痛みをすくなくするという工夫がされた。さらに鍼より少し短い管を使うことで無痛で皮膚を切る(切皮)方法を管鍼法といい、江戸時代に開発された日本独自の方法である。

❷繊細な切診

 東洋医学の特徴的な診察法である四診を望・聞・問・切という。望診はみて、聞診は聞いたり嗅いだりして、問診は尋ねて、切診は触れてする診察法だ。日本人はこれらの繊細な運経穴人形用をし、特に切診が得意だ。脈を診たり腹を診たりして身体の微妙な変化を読み取るわけだ。

 

・マッサージの資格って知ってた?

 皆さんは気軽にいろいろなマッサージなどを受けているかもしれない。たぶんそのほとんどは国家資格ではない。日本であん摩やマッサージなどの資格として国が認めているのは「あん摩マッサージ指圧師」(業界ではこれを「あマ指」と略す)のみだ。これは専門学校で3年間勉強し、国家試験に合格してはじめて得られるものだ。

 街でみかける整体、リフレなどは公的な資格ではない。もちろんしっかりと知識・技術を教えているところもないことはないが、あなたが明日から「私は整体師です」といって開業できるということでもある。

 しかも理不尽なことに、国家資格には“広告の制限”というものがあり、例えば「・・・に効く」とか「料金がいくら」だとかは広告できない。しかし資格のない方ではなんでもOK。なんでも書けるわけ。これはかなりおかしい制度だ。

 これを逆手に取ると、効果や料金を広告しているものは国家資格ではないということがわかるので、判断材料にするとよい。

 

第1回目「東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その1
次回は「気ってなに?」。12/10ころに公開予定。
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