東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その3

 

東洋医学は“気”の医学といわれる。

みなさんは気ってなんだか知っているだろうか? 気はどこを流れているか知っているだろうか?

3回目の今回はそのあたりについてなるべくわかりやすく解説してみる。ただし、これを読めば気の流れが良くなるかどうかは、かならずしも保証できない。

            目次

    1.すべてのものは“気”でできている?

       1-1.まずは“解剖”について

       1-2.万物を構成する「気」

       1-3.天人合一思想

    2.ひとのからだと気

       2-1.生老病死と気のかかわり

       2-2.気の種類にもいろいろある

 

1.すべてのものは“気”でできている?!


 東洋医学では”気“というものが非常に重要な役割をはたしている。この気について詳しく説明しよう。

 

1-1.まずは“解剖”について

東洋医学は五臓六腑などといってキチンと身体を把握していないと思われているかもしれないが、じつは“解剖”という言葉は東洋医学の代表的な古典である『霊枢』という書物に初めて書かれた言葉なのだ。そのあたりについて少し解説しよう。

 

・解剖の知識~古代中国人は解剖をしていたか?Human-anatomy

「東洋医学は非科学的で信用できない」といった言葉を聞くことがある。「臓腑についても現代の解剖学の知識と違っている」などといわれたりする。

ところが人体をくわしく解剖したのは古代中国のほうが先だったようなのだ。約2000年前に書かれた『黄帝内経』という東洋医学の代表的な古典の『霊枢』という書物の中には非常に詳細な解剖の記述がある。これは現代医学の解剖のレベルに近い正確さをもっている。しかも“解剖”という言葉はこの『霊枢』に初めて書かれた言葉だ。

 

・西洋医学との方向性の違い

 解剖をしたところまでは同じである。その後の方向が決定的に違ったのだ。

 西洋医学ではさらに細かく分析的にというかミクロの方向性に進んでいった。この臓器のなかはどうなっているのか? この管のなかにはなにが流れているのか? どんどん細かく見ていった。

 一方、古代の中国のひとびとは違う見かたをした。これは死体で動いていない。そこで、生きて動いている人とこの動かない物体との違いは何かを考えたのだ。その答えが“気”である。気が流れているから生きていて、気が散逸したから死んでしまった。そう考えたのだ。そこから気が流れるルートとしての経絡や気の出入りするポイントとしてのツボをみつけた。その目のつけどころがおもしろい。

 

 

1-2.万物を構成する「気」

气3東洋医学では気という概念を重視する。すべてのものは気でつくられていると考えているからだ。ここではそのあたりについて説明する。

 「気」という字は「氣」「气」などと書くが、後漢に成立した最古の辞書である『説文解字』によると、氣とは「御飯を炊く時に出る湯気」のこと。あのモヤモヤである。

 一方、日本を代表する漢字学者の白川静によると、はじめは横棒三本でそれが「气」になり、「運気の流れることを示す」字であるという。彼は甲骨文字と金文という『説文』より古い文字体系を拠り所にしている。古代では、外敵と戦うときに前線に出たシャーマンから一斉に呪いをかけてくる。その妖気が雲に現れるのを運気と呼ぶ。味方のシャーマンが一斉にその気を望んでよみとるわけだ。つまり白川説では「気」の原義は、霊的な性格をもつある実体のことであり、変幻自在な存在であるとしている。気は流れ・発し・察するものであるから、白河説をとりたい。

 

・宇宙のはじまり

 『淮南子』という前漢の武帝がつくらせた思想書には次のように説明されている。宇宙

  ❶宇宙のはじまりは混沌である。これを「太易」という。

  ❷そこに気が生じる。これを「太初」という。

  ❸その気が「陽気」と「陰気」にわかれる。

  ❹さらに陽気は「天」となり、陰気は「地」となって天地ができる。

  ❺その天と地のあいだに「万物」が生じる。

 

・気が宇宙をつくり、人のからだをつくる

 古代中国の哲学では、宇宙に存在するすべてのものは気でつくられていると考える。気というものは常に動き、形を変える。ひとのからだのなかでも同じことが起こっていて、気の変化がひとの健康状態を左右しているととらえるのだ。

 

・気は過不足がないことが大切

 気は、活力の源のようなものである。英語では“Life power”などと説明される(表記は“Qi”つまり中国語読みの“チー”のこと)。だから不足してはまずいわけ。不足するとやる気や元気がなくなり、心もからだも健康でいられなくなるからだ。

 

・気は流れている状態が健康

 『呂氏春秋』(達鬱篇)という古典につぎのような文がある。朝靄

「流水は腐らず、戸枢は螻さず、動けばなり。」

(流れている水は腐らないし、戸の蝶番は虫が喰わない、動いているからである)

 つまり気は流れているのがよい状態、健康だということ。じつはこれは血にも水にもいえることだ。からだを構成している気・血・水はすべて過不足なく流れているのがいいのだ。ちなみに、気が流れているルートは“経絡”。

 

 

1-3.天人合一思想

 東洋医学には「天人合一思想」という考え方がある。なんだか難しそうだが、要は天(つまりひとをとりまくすべての自然環境)と人は一体であるということをいっている。

 

・大宇宙のなかのひと

 ひとは生きていくために必要な食物も空気も、すべてを天と地からなる大自然(大宇宙)にたよっているという考え。ひとは自然の恩恵を受けずに生きてはいけない存在なのである。

 

・からだのなかにも小宇宙

 さらにからだのなかに目を向けると、そこにも小自然(小宇宙)が存在する。人体の組織や器官はそれぞれが異なった働きをしているが、同時に全体としてひとつのつながりを持った宇宙のような統一体であると考える。代表的なのが臓腑間の関係だ。それぞれの臓腑はある関係性をもってつながっている。これは西洋医学とは違うとても興味深い見かただ。詳細については後日。

宇宙から見た地球

・自然の法則

ひとは宇宙の一部だし、ひとのなかにも宇宙があるわけだから、ひとは自然の法則にしたがっていると見るのも東洋医学の大切な視点だ。

たとえば、温かい空気は上に向かい、冷たい空気は下へ向かう。からだのなかでも上半身がのぼせやすく、下半身は冷えやすい。だから“頭寒足熱”がいいのだ。そのように自然の法則を診断や治療に応用している。

 

 

2.ひとのからだと気


 上で説明した“気”というものが“ひとのからだ”とどのようにかかわっているのかについてもうすこし詳しく説明する。

 

2-1.生老病死と気のかかわり

 ひとの生老病死と気とのかかわりについて、東洋医学の古典に書かれている内容をつかって説明しよう。

 

・『素問』六節臓象論第九『素問』六節臓象論

まず、父の精と母の精が合して生命が誕生する。この合した精は腎という臓にしまわれて、生命力の源である原気(元気)となる。

産まれたあとは、天の陽気(空気中の活力源)と地の陰気(飲食物中の活力源)を取り入れて生命活動を維持する。だから健康でいるためには“呼吸”と“食”が大切なのだ。

陰陽の気が調和している状態を“健康”といい、陰陽の気の不調和な状態を“疾病”といい、気が散逸(バラバラになって散り失せた)した状態を“死”ととらえる。

 

 

2-2.気の種類にもいろいろある

 気にはいろいろな種類のものがあり、それぞれ役割が違っている。代表的なものだけ説明しておく。

 

・原気(元気) げんき~生命活動の原動力となる根本の気。成長や発育、老化などにかかわる。

・宗気 そうき~飲食物と呼吸によって得られ、呼吸や発声、血の運行などとかかわる。

・営気 えいき~飲食物からつくられ、栄養分をからだに運ぶ。

・衛気 えき~外邪の侵入を防ぎ、全身を温め、発汗をコントロールする。

 

 気をつくるもとになるものは空気と飲食物。だから東洋医学的な意味で健康でいるためには、良い空気を正しい呼吸で取り込むことと、良い食べ物を正しく適量食べることが大切。これが養生の基本である。

 

 

第1回「東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その1

第2回「東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その2

 

次回は「陰と陽」。12/13ころに公開予定。

 

 

手 Freepikによるベクターデザイン

Back to Top ↑