五行のオモシロさについて

 

今回は夏休みということもあり、いつもの内容とはすこし違うことについて書いてみます。

五行という考え方についてです。

 

1.「握」について


 

東洋医学の考え方の基本に五行という考え方があるということは、第5回で学びました。

この五行という考えを診察、診断、治療に使っていくのは、東洋医学の楽しさのひとつでもあります。

 

先月から始まった「やりなおし鍼灸治療学」の講義のなかで五行の見かたを説明したのですが、そのときに肝の病に「握」という病変が現れやすいと説明したところ、次のような質問がありました。

 

質問:五行の「木」に「握」というのがありましたが、これは初めてみたのですが、五行の何に入っているのでしょうか? 

また火・土・金・水には何が入っているのでしょうか?

 

この質問に回答するために少し資料を調べてみて、いろいろとオモシロいことがあったのでここでご紹介したいと思います。

 

 

2.五変


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この“握”がでてくるのは五行の「五変」のひとつで、東洋医学の代表的な古典である『素問』の陰陽応象大論(第五)に書かれています。

そこには、

「在変動為握」(変動にありては握となす)

と記されています。

意味は、木つまり肝の病変の現れとしては握となる、ということです。

握るという病変は、もちろん肝が筋と結びつきが強いことと関係が深いわけですね。

ギューッと筋が緊張する感じです。

つまり肝が病むと筋が異常に緊張するというような症状がおこりやすくなる、ということです。

五変の他の行については、火は憂、土は噦(エツ、しゃっくり)、金は欬(ガイ、せき)、水は慄(リツ、ふるえ)となり、表にするとこんな感じです。

 

五行

五臓

五変

欬(咳)

五病

欬(咳)

欠・嚔

 

五臓に対応する病としては、ほかに「五病」というものもあるので、ついでに表に加えておきました。

ちなみに五病にでてくる語は多弁・多言、噫(アイ)はしゃっくり、呑は胃酸の逆流、欬は咳、腎に対応する病の欠はおくびで嚔(テイ)はくさめ、つまりクシャミのことです。

 

 

3.ちょっと変?


 

ここから先はちょっと難しくなるので読まなくても結構ですが、火行の「憂」が何だかおかしいことに気がつきませんか?

憂というのは「五志」という五臓を傷る(傷害する)感情のことで、肺つまり金の行に属しているとされているんです。

憂いという感情が強いと肺という臓を損なうことになる、という意味ですね。

それなのにここでは火行、つまり心の病変として書かれているわけなんです。

これについていろいろ調べてみたところ、父の『素問』の講義録のなかにこんな説明がありました。

 

————-以下引用

于鬯(ウチョウ)という清代の学者が、『香草続校書』という本の中では次のように言っております。

「憂はまさに、読みは【口+憂】(字がないのですが、口へんに憂という字です)と為すべし。憂は既に肺の志と為し、下にまた心の変動と為す。」

『玉篇』という字書の口部にはですね、【口+憂】を気逆と解釈している。

で、心が変動すると気逆を起こす。

これは、脾が変動すると噦となったり、肺の変動で欬となるのと、みな共通して同類である。

だから、これは【口+憂】、つまり気逆というふうに解釈したほうがよかろうと。

————-引用終わり

 

気逆とは、気の上昇が過度になり、下降が不十分で気が上逆した病態のことを指しています。

症状としてはイライラしやすく怒りっぽい、頭痛やめまい、咳や痰、喘息、悪心・嘔吐、げっぷ、しゃっくりなどが出やすくなるような状態のことです。

これはまさに肝の病変としてピッタリきます。

 

 

4.筋ケイレン


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ところで、筋の異常収縮ということに関連して、最近ちょっと面白い記事を見つけました。

こちらです。

筋ケイレンの一種である”こむら返り”は、私自身もフルマラソン終盤で悩まされている症状のひとつです。

これが実は、いままで言われてきたような脱水や電解質の不足、あるいは筋繊維の破損などが原因ではないという説が出てきたというのです。

少量のピリッとした飲料で脚がつらなくなるということを、ノーベル賞を受賞した学者が発見したというのです。

 

なかなか興味深い内容ですが、じつはこれを五行で考えてみるとかなりオモシロいんです。

ピリッとした飲み物ということは「辛い」、つまり五味では金の行に属するわけです。

ということは金は木を克す(第5回に説明した五行どうしの関係性のうち相克関係のことで、金は木に勝つという意味)ことから、木(肝)の筋の異常収縮という状態を解消してくれると考えてもイイかもしれないんです! ちょっと凄くないですか?

五行の相克関係については少し難しいので、図を載せておきますので見ながら説明を読んでください。五行関係図_臓腑

 

ショウガ、シナモン、トウガラシなどの香辛料の配合を変えてみて、長距離を走る前に飲んでみようなどと目論んでいる今日この頃です。

もっとも、東洋医学ということでは、漢方薬の芍薬甘草湯がこむら返りなどの筋肉のケイレンに速効性があるということですね。

漢方薬の使い方としてはちょっとおかしな使い方ですけど・・・。

 

それにしても東洋医学はホントに面白いですね。

 

 

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第2回「東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その2

第3回「東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その3

第4回「東洋医学のベースにある2つの考え方 その1

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第6回「ほんとうの自分の干支を知っているひとは意外に少ない?!

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第29回「東洋医学エピソードシリーズ9「小指で三陰交」

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第32回「東洋医学のツボをはずさないために その6 経脈各論4

第33回「東洋医学エピソードシリーズ11「ばね指」

第34回「特別編「日本鍼灸の実情と今後」

第35回「東洋医学のツボをはずさないために その7 経脈各論5

第36回「東洋医学エピソードシリーズ12「鍼灸のプラス効果」

第37回「東洋医学のツボをはずさないために その8 経脈各論6

 

次回は8/22ころに公開予定。

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