臨床エピソードシリーズ15 ガンに対するお灸の効果

 

鍼灸についてのお話、今回はガンに対するお灸の効果についてです。 

 

1.余命半年


私の父は日本伝統鍼灸学会の会長在任中にガンで他界しました。68 歳でした。

死因は胆管ガンです。胆管は肝臓でつくられた胆汁を十二指腸まで運ぶ管です。9d0071840fdf5e14d2ac4248b0c3cc4c_s

弟の結婚式の数日前に黄疸が出て、受診したときには余命半年と言われ、手術も困難な状態でした。

 

検査結果を聞きに行った母と私に、主治医はこう言いました。

「ご主人はもうご自分がガンで余命が半年だということをご存じで、奥様やご家族にそのことをどう伝えたらいいか悩んでいらっしゃいますよ」と。 

父は鍼灸にはガンになるのを防ぐ効果があると学会などでも発表していたのですが、父自身が定期的に鍼灸治療を受けることがなかったのが残念でなりません。

 

 

2.ガンが縮小?


 

b24ad6f6e521b030d26cf6bc127c9096_sガンで余命宣告を受けてから、ほぼ毎日のように鍼灸治療をすることになりました。

週に1回は私の師でもある井上雅文先生に往診していただき、父が懇意にしていた小川卓良先生のお弟子さんが 2~3回、私が残りといった感じでした。

父は治療の内容についてはほとんど注文を付けませんでしたが、患部の体表上に多壮灸(お灸をたくさんすえること)をしてくれとだけ言っていました。

ですので、多いときは 1回の治療で 200~300 壮もの灸をすえました。 

 

自宅での治療は遠慮なくできますが、入院中は処置室などをお借りして鍼灸の治療を継続していました。

お灸の煙が他の患者さんの迷惑にならないようにするためです。

主治医は父を鍼灸師として尊重してくれて、自由に鍼灸治療を受けられる体制を確保してくれていたんです。

そんな日々を送っていたある時、主治医から「ガンが縮小してきているようなので、切除できるかもしれない」と言われたのです。

父も私たち家族も、希望の光が見えたことで仄かな期待を抱くようになりました。

 

 

 

3.灸治療の禁止


ところが、手術に向けてガンの位置や大きさなどを正確に再検査するため癌研病院に転院することになりました。

なんとそこでは煙の出る灸治療が禁止されてしまったのです。

父も、治療している私たちも、灸治療がガンの縮小に果たした役割は大きいと思っていましたので、少なからずショックでした。 
検査入院は2週間ほどでしたが、再検査の結果は手術は無理というものでした。

希望の光が潰えた瞬間です。%e5%ba%a7%e8%ab%87%e4%bc%9a_s470906

その時に私が感じたのは、やはりどんなことをしても灸治療を続けるべきだったという後悔の念です。

そのまま回復することなく、2000年の夏に父は逝ってしまいました。 

本当に灸がガンを縮小させ、灸ができなくなったことでまたガンが勢いを増したのかどうかは分かりません。

ただ、私にとってはどうしても忘れることができない貴重な臨床経験です。 

写真は父が鍼灸界に入って間もないころの写真です。後列左が父、前列右が父の師匠である丸山昌朗先生です。

 

 

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次回は10/17ころ公開予定

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