臨床エピソードシリーズ17 昭和の名人の技 その2

 

鍼灸についての臨床エピソード、父のことを書いた原稿を前回からシリーズでお送りしています。今回は2回目です。

内容は主に父の臨床についてです。

 

3)気合


 

鍼灸の技の話ではないのですが、父の治療を「気合いの治療」と評した人がいたそうです。

やはり金古英毅先生の追悼文に次のようにあります。

「先生の治療を、「気合いの治療」と評した人がいる。あの穏やかな目の奥に潜む、『内経』に裏付けられた学識をしのぐ烈々たる気迫と集中力が、多くの患者さんの邪気を駆遂していたのだと思う。」

 

確かに父は治療に入ると非常に集中し、他のことが見えなくなるようなことはありました。

池袋の治療室はベッドが2台あり、患者さんはすべて予約制で、一人30分枠で一枠に2名予約を取っていたのでが、治療に夢中になるあまり治療時間が30分を大幅に超えるようなことがよくありました。

完全予約制の待合室に患者さんがどんどん溜まっていくわけです。私は気が気ではありませんでしたが、父は気にする様子がありません。目の前の患者さんに対する治療しか見えていないようでした。

たぶん父の中の基準は、「いま目の前にいる患者さんに、自分がいまできることはすべてする」ということだったのかもしれません。治療における集中力の大切さを学びました。

 

これははじめに断っておかなければいけなかったことですが、この原稿の中で父の臨床について私が書くことは、ほとんどが推測です。父からは臨床に関することを尋ねることを禁止されていましたのでご理解ください。

写真は丹澤章八先生(当時、神奈川県総合リハビリテーション研究研修所副所長)、凌耀星先生(当時、上海中医学院教授)、父(当時、日本内経医学会会長)の3名による「日中鍼灸の異と同」と題した日本経絡学会(現、日本伝統鍼灸学会)の鼎談の小冊子です。

本を整理していたら出てきました。

 

 

4)臨床


app0002

 

私が助手に付くようになって以降、父が一人の患者さんの治療に使っていた鍼の数は6本です。

鍼皿には神戸製の金鍼(寸3の2番)4本と灸頭鍼用のステンレス鍼(寸6~2寸5分の3~5番を適宜選択)2本が入っていて、どんな患者さんでも大体これで治療していました。

ここに至るまでにはいろいろと鍼の本数を変えていたようですけれど、最終的にこの本数に落ち着いたようです。

他には透熱灸、知熱灸、刺絡などが主な治療手段でした。

 

他の鍼灸治療院といちばん違っていたのは、整形外科疾患の患者さんが少なく、内科疾患や難病の方が多かったことかもしれません。

一般的な肩こりや腰痛の患者さんももちろんいましたが、癌の末期の方や、リウマチの変形の酷い方、脊髄小脳変性症など、卒業直後の私には「学校で習った鍼灸院の対象患者とはかなり違う」という戸惑いばかりでした。

ふつう風邪を引くと治療の予約をキャンセルする患者さんが多いようですが、父の患者さんは電話を掛けてきて「風邪気味なので予約をしていないけど今日これから行きたいんです。」などと言ってきます。

鍼灸が様々な疾患に有効であり、また慢性疾患だけでなく急性の症状にも十分効果があることを思い知りました。

 

次回以降、まだまだ続きます。

 

 

治療が楽しくなる鍼灸師を育てたい!

本ブログの執筆者島田 力が講師をする「やりなおし鍼灸治療学」の2期生の募集が12/1から始まりました。

受講料は月々15,000円
オンライン動画でスマホ・タブレット・パソコンで視聴できるのでいつでもどこでも学べます。
テキストは講師も執筆している『新版 東洋医学概論』

修了者のみ受講可能な実技スクーリング(3日間、9万円)

2期生の申込み〆切は1月31日まで
お申し込みはお早めに!

詳細は下記のバナーをクリックして専用ホームページへ

やりなおし鍼灸治療学

 
 

 

 

 

第1回「東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その1

第2回「東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その2

第3回「東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その3

第4回「東洋医学のベースにある2つの考え方 その1

第5回「東洋医学のベースにある2つの考え方 その2

第6回「ほんとうの自分の干支を知っているひとは意外に少ない?!

第7回「東洋医学を正しく理解するために絶対に知っておくべき気血水のはなし その1

第8回「東洋医学を正しく理解するために絶対に知っておくべき気血水のはなし その2

第9回「東洋医学を正しく理解するために絶対に知っておくべき気血水のはなし その3

第10回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その1

第11回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その2

第12回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その3

第13回「東洋医学エピソードシリーズ1「鍼灸がこんなことに効くって知ってました?」

第14回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その4

第15回「東洋医学エピソードシリーズ2「肺癌末期の女性患者について」

第16回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その5

第17回「東洋医学エピソードシリーズ3「サンフランのエイズ患者」

第18回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その6

第19回「東洋医学エピソードシリーズ4「家内の胃の痛み」

第20回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その7

第21回「東洋医学エピソードシリーズ5「拒食症」

第22回「東洋医学のツボをはずさないために その1経絡

第23回「東洋医学エピソードシリーズ6「ねん挫」

第24回「東洋医学のツボをはずさないために その2 ツボ

第25回「東洋医学エピソードシリーズ7「梅の種」

第26回「東洋医学のツボをはずさないために その3 経脈各論1

第27回「東洋医学エピソードシリーズ8「裏内庭」

第28回「東洋医学のツボをはずさないために その4 経脈各論2

第29回「東洋医学エピソードシリーズ9「小指で三陰交」

第30回「東洋医学のツボをはずさないために その5 経脈各論3

第31回「東洋医学エピソードシリーズ10「自然気胸」

第32回「東洋医学のツボをはずさないために その6 経脈各論4

第33回「東洋医学エピソードシリーズ11「ばね指」

第34回「特別編「日本鍼灸の実情と今後」

第35回「東洋医学のツボをはずさないために その7 経脈各論5

第36回「東洋医学エピソードシリーズ12「鍼灸のプラス効果」

第37回「東洋医学のツボをはずさないために その8 経脈各論6

第38回「特別編「五行のオモシロさについて」

第39回「東洋医学エピソードシリーズ13「インコ」

第40回「東洋医学のツボをはずさないために その9 経脈各論7

第41回「臨床エピソードシリーズ14 「大腿骨頭壊死」

第42回「東洋医学的日々雑感シリーズ1「暑さ寒さも彼岸まで?」

第43回「東洋医学の活かし方シリーズ1「どうすれば美肌になれるか、東洋医学で考えてみた(1)」

第44回「知っておくと役に立つ東洋医学的な”病気の見かた” その1

第45回「臨床エピソードシリーズ15「ガンに対するお灸の効果」

第46回「東洋医学的日々雑感シリーズ2「「スポーツの秋」を東洋医学で考えると?」

第47回「東洋医学の活かし方シリーズ2「どうすれば美肌になれるか、東洋医学で考えてみた(2)」

第48回「知っておくと役に立つ東洋医学的な”病気の見かた” その2

第49回「臨床エピソードシリーズ16「昭和の名人の技 其の1」

第50回「東洋医学的日々雑感シリーズ3「七五三」について東洋医学的に思いつくままに考えてみた」

第51回「東洋医学の活かし方シリーズ3  アロマセラピスト篇「香りと健康の関係について、東洋医学的に考えてみた」

第52回「知っておくと役に立つ東洋医学的な”病気の見かた” その3

 次回は12/12ころ公開予定

TOPに移動

Comments are closed.

Back to Top ↑