臨床エピソードシリーズ18 昭和の名人の技 その3 刺絡と施灸

鍼灸についての臨床エピソード、父のことを書いた原稿(今回は多少改訂しています)を前々回からシリーズでお送りしています。

今回は3回目です。

内容としては主に父の臨床のなかから刺絡施灸についてです。

 

5)刺絡  


 

治療方法では、師匠である丸山昌朗先生のテーマのひとつであった刺絡にはかなりこだわりがあったようです。

刺絡というのは、簡単に言うと流れの滞った悪い血を取り除くことによって血の流れをスムーズにするための鍼灸の治療法のひとつです。つまり悪い血を取るということですね。

その刺絡をキチンと位置付けるための学会である日本刺絡学会の、さらに前身である刺絡問題懇話会の立ち上げから関わり、刺絡の普及に努めてきた父ですが、自分自身の臨床でもかなりこの治療方法を頻繁に使っていました。

例えば、風邪で喉が痛い患者さんには少商の刺絡をすることが多かったように思います。

この親指の爪の付け根から少量の血を取るという治療法は、効果がすぐに現れるだけでなく、効果自体もとても優れています。

この治療をする際に、父は患者さんの両手の井穴を同時に左右の母指と示指で挟んで転がすように揉み、痛みの強い方のみに刺絡をしていました。

これは少しでも無駄な出血を抑えたいための方法です。  

その他、刺絡という治療法に関して言えば、井穴刺絡での血の絞り方、細絡の見つけ方、刺絡すべき細絡の決定方法、皮膚を切るときの三稜鍼の動かし方、さらには刺絡を止める時期の血液の性状・色の変化からの見極め方など、治療の助手についているときの具体的な父からの指示がその後の私の臨床の役に立ちました。

それらの内容は『刺絡鍼法マニュアル』(⬅︎現在は新版に改訂)という書籍にまとめて日本刺絡学会から出版されました。

 

刺絡治療の適応については、「まず刺絡」ではなく「最後の手段として刺絡」ということ、刺絡で取る血の量については「必要最小限にする」ということをよく言っていました。

刺絡というのは実によく効く治療手段で、肩こりなどを簡単に改善してしまうのですが、この辺りは私自身の臨床にも強く反映されていて、現在はどうしても刺絡でないと治らない場合にのみ使うようにしています。  

何せ、血を取るという難しい治療法なのですから。

 

 

6)施灸  


 

ところで、最近はお灸のできない鍼灸師が多くなっていると聞きますが、父は臨床の中で非常によく施灸を使っていました。

 

透熱灸の捻り方はちょっと変わっていて、ふつうは左手で捻って右手でそれを適当なところでちぎって底面をととのえて皮膚にすえますが、父は左手ではほとんど捻ら ないで、右手でちぎってから母指と示指で捻っていました。

どこで習ったのか、それとも自分で工夫したのか聞く機会を逃してしまいましたが、面白い捻り方でした。  

施灸の使い方としてはツボの反応を重視していましたが、例えば百会などは、触診してブヨブヨして軟らかい感じがあれば補法の灸、押しても凹まなくて硬くピンと張った感じがあれば刺絡をするという使い分けをしていました。

足三里や関元はよく灸点を下ろされたツボです。場合によっては何壮でも熱くなるまで(知熱)すえることもよくありました。  

知熱灸は少し小ぶりの高さの低い円錐形のものを作ってすえていました。

この知熱灸については、関節リウマチの患部へ1壮すえるだけでかなり痛みが軽減し、その効果に驚かされたのを覚えています。  

灸頭鍼はほとんどの患者さんの腎兪や志室などに使用していたと記憶しています。

私自身も好きですが、腰が温まるととても気持ちがよく、患者さんから「またあれをやってほしい」とよくせがまれていました。

お灸は自宅でのセルフメンテナンスの方法としてもとても良いものですので、その効果がキチンと認識されて、もっと広まるようにしたいものです。  

 

まだまだ続きますので、今回はこのあたりまで。

 

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 次回は1/16ころ公開予定

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