東洋医学エピソードシリーズ9 「小指で三陰交」

今回はツボの使い方についてです。みなさんもよくご存知の三陰交。前回に引き続き、父の文章を引用しながら進めます。

 

1.鎌倉という縁


 私はいま鎌倉に住んでいます。

 都内の大崎から移り住むキッカケになったのは、じつは愛犬のRYUなんです。IMG_1604

 あるとき衝動的にイヌが飼いたくなり、ミニチュアシュナウザーのRYUと出会いました。ひと目で気に入って家族となり、毎日、目黒川沿いを散歩三昧。マンションの玄関で会った他の住人の方にも元気に「おはようございま~す」と挨拶し、楽しい日々を送っていました。

 そんなある日、マンションの掲示板に「このマンションは、鑑賞用の魚と鳥以外は飼ってはいけないことになっています」という張り紙がされるとともに、各戸に同じ内容の文書が配布されました。

 当時、私はマンションの管理組合の理事長をしていましたが、まったくの寝耳に水状態。

 家内が「理事長なのに知らなかったの?」と責めます。

 「うーん、確か最初の説明会で『いちおうこういう規定になっていますが、住民の方々で話し合って、変更は可能です』とマンションの管理会社の社員が話していたんだけど・・・」

 「それって、変更されてないってことじゃないの?」と家内。

 そこで気の短い私は、「じゃあここを売って引っ越そうよ」と言いだす始末。さっそく翌日から引っ越し先探しが始まりました。

 結果敵にたどりついたのが、ここ鎌倉です。RYUと一緒に海岸を散歩できる、というのが決め手でした。

 越してきてみて改めて気づかされたのは、じつはこの鎌倉には父の師匠である丸山昌朗先生が住んでいらしたということでした。

 

 

2.丸山先生


 2014-03-06 11.27.45父の師匠は丸山昌朗先生といって、医師なのに治療には鍼灸と漢方薬しか使わないとても有名な方でした。

 先生のご実家が鎌倉で、私が「気流」(明月院のそばなので、紫陽花の咲く6月中だけ限定でカフェをやっています)というコンセプトスペースを開いた北鎌倉からほど近い、亀ヶ谷切通しのてっぺん付近にあるご自宅で開業していたことがあるそうです。

 ここは以前、哲学者の西田幾多郎が別荘として使っていた家だそうですが、あの坂は亀もひっくり返るというほど急な坂で、今更ながらこんなところまで患者さんが来られたのだろうかと心配になってしまいます。

 また、丸山先生のお墓は北鎌倉にある鎌倉五山の浄智寺さんにあります。これは当時のご住職(現ご住職の祖父)である朝比奈宗源禅師と先生の親交が深かったからとのことです。

 そんなご縁もあって、丸山先生の思い出話をひとつ紹介させていただきます。

 

 

3.妹の不調


 ここに出てくる三陰交というツボは、婦人科疾患に効果があることで一般的にもとても有名なツボですが、ちょっと違う使い方もあるんです。

 これまた父の文章でご紹介します。

 

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 私の長女が小学校の一~二年生の頃だったと思います。4677f2ea873fe002138fc06e1f1b69dd_s

 鍼灸学校を卒業したばかりで、往診などで遅くなり夜の十二時過ぎに帰宅すると、娘が先程からの突然の尿閉で泣いている。

 家内が「もう一時間くらい、トイレを往復しているがオシッコが出ない」と慌てている。

 先生に電話してご指示を仰ぐと「小指で三陰交の辺りを下から上に向かって軽くこすれ」と言われる。

 指示通りにすると、いままで泣き叫んでいた娘が「出た、出た」と大声で喜ぶ。

 「何故小指で、なのですか」と次にご教示を受ける機会にお聞きすると、「君の人指し指では強すぎるのだ」と。

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 短い文章ですが、ツボの使い方、刺激の量について、とても勉強になります。

 

 

4.ツボの刺激 


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 ツボへの刺激って、実はとても繊細なんですね。それが感じられるエピソードだと思って紹介しました。

 よく一般向けのツボの本を見ながら熱心にツボを押している方がいますが、大抵は強く押すほど効果があると思ってあとがつくほどグリグリやっています。

 無理もない話ですが、ツボは強く押せばイイというものでもないということを知っておいてください。

 小指で軽くこするだけで、ひとの体は十分に反応するんです。

 押し方が気になるという方は、恐縮ですがツボとその押し方の強さについて私と家内が書いたこちらの本をご参照ください。 

長生きしたければひじ下ひざ下を押しなさい2014-04-05 22.34.20

 

 私自身、父の姿を見て育ったからこそこの世界に進み、いまの自分があると思っています。今回はそんな父の尊敬した師匠の逸話でした。

 上の写真の前列右が丸山先生、後列左が父です。

 右は父の著作集です。 

 父と関わりのあった方々が作ってくれた本で、私にとって臨床に関する教えがたくさん詰まった本です。

 

 

 

 

 

第1回「東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その1

第2回「東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その2

第3回「東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その3

第4回「東洋医学のベースにある2つの考え方 その1

第5回「東洋医学のベースにある2つの考え方 その2

第6回「ほんとうの自分の干支を知っているひとは意外に少ない?!

第7回「東洋医学を正しく理解するために絶対に知っておくべき気血水のはなし その1

第8回「東洋医学を正しく理解するために絶対に知っておくべき気血水のはなし その2

第9回「東洋医学を正しく理解するために絶対に知っておくべき気血水のはなし その3

第10回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その1

第11回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その2

第12回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その3

第13回「東洋医学エピソードシリーズ1「鍼灸がこんなことに効くって知ってました?」

第14回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その4

第15回「東洋医学エピソードシリーズ2「肺癌末期の女性患者について」

第16回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その5

第17回「東洋医学エピソードシリーズ3「サンフランのエイズ患者」

第18回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その6

第19回「東洋医学エピソードシリーズ4「家内の胃の痛み」

第20回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その7

第21回「東洋医学エピソードシリーズ5「拒食症」

第22回「東洋医学のツボをはずさないために その1 経絡

第23回「東洋医学エピソードシリーズ6「ねん挫」

第24回「東洋医学のツボをはずさないために その2 ツボ

第25回「東洋医学エピソードシリーズ7「梅の種」

第26回「東洋医学のツボをはずさないために その3

第27回「東洋医学エピソードシリーズ8「裏内庭」

第28回「東洋医学のツボをはずさないために その4

次回は「東洋医学のツボをはずさないために その5」
6/13ころに公開予定。

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