ほんとうの健康を自分自身の手でつかむための養生の基本 「呼吸」その6

書き始めてみたら意外に長引いてしまった呼吸シリーズ。
今回は江戸時代の養生の大家である貝原益軒の『養生訓』の呼吸に関する記述をみてみます。
その前に、敬意を評して貝原益軒について少しだけ。
 
江戸前期の本草学者で儒学者でもある貝原益軒(1630-1714)は、日本を代表する養生書である『養生訓』のみならず生涯で270巻以上の著書があります。
ですが、これらはすべて70歳でリタイアしてから書いたものだそうです。
しかもこの『養生訓』はなんと彼が83歳のときの著作です。
つまり本書は、元気で長生きした益軒自身の体験にもとづいた健康法に関する解説書、ということになります。
 
それでは、具体的な記述をみていきましょう。
 
 

1)呼吸の方法

まずは「呼吸の方法」と題された篇をみていきます。
この部分は全文を載せておきます。
 
呼吸は人の鼻よりつねに出入る息也。呼は出る息也。内気をはく也。吸は入る息なり。外気をすふ也。
呼吸は人の生気也。呼吸なければ死す。人の腹の気は天地の気と同くして、内外相通ず。人の天地の気の中にあるは、魚の水中にあるが如し。魚の腹中の水も外の水と出入して、同じ。人の腹中にある気も天地の気と同じ。されども腹中の気は臓腑にありて、ふるくけがる。天地の気は新くして清し。
時々鼻より外気を多く吸入べし。吸入ところの気、腹中に多くたまりたるとき、口中より少づつしづかに吐き出すべし。あらく早くはき出すべからず。これふるくけがれたる気をはき出して、新しき清き気を吸入る也。新とふるきと、かゆる也。
これを行なふ時、身を正しく仰ぎ、足をのべふし、目をふさぎ、手をにぎりかため、両足の間、去事五寸、両ひぢと体との間も、相去事おのおの五寸なるべし。一日一夜の間、一両度行ふべし。久してしるしを見るべし。気を安和にして行ふべし。(『養生訓』261)
 
ポイントとしては、呼吸は鼻から多く吸って、口から少しずつ静かに吐き出せ、と書かれている点です。
そのなかでも特にオモシロいのは、これをするときには「仰向けに寝て、足を伸ばし、目を閉じ、手を握り、両足の間と肘とカラダの間を5寸開け、気を安らかにして一日に二度行う」ように書かれている部分です。
 
また別のところに、このような記述があります。
 
『千金方』に、常に鼻より清気を引入れ、口より濁気を吐出す。入ること多く出すこと少なくす。出す時は口をほそくひらきて少吐べし。(『養生訓』262)
 
ここに紹介されている『千金方』というのは、唐代の名医孫思邈(ソンシバク、581-682)による中国の代表的な古典で、正式には『備急千金要方』という本のことです。
そこにも鼻から清気を多く入れて、口を細く開いて濁気を少なく出す、と書かれているとあります。
この方法については、『養生訓』ではブレていません。
 
実際に『千金方』の原文に当たってみたところ、仰向けに寝て云々の記述などもあり、
「この調気の法は、夜半過ぎと午前中にやると気が生じて調いやすい」と書かれていますので、ここに追加しておきます。
 
 

2)普段の呼吸

次に普段の呼吸について書かれている部分をみてみましょう。
 
常の呼吸のいきは、ゆるやかにして、深く丹田に入べし。急なるべからず。
 
吸気をゆるやかに丹田までいれること、が重要だと書かれています。
丹田については他の篇にも詳しく書かれている部分があって、そこでは「人身の命根のある所」とされています。
要点としては、腰を正しく据えて、呼吸をしずめ、真気を丹田に集め、口から少しずつ息を吐くようにする、ことです。
そうすれば「気のぼらず、むねさはがずして身に力あり」となるということです。
 
胸に気が上らず、胸が騒がしくならないで、カラダに力がみなぎる、ことになるんだと。
呼吸も大事だけれども、気が胸まで上がらないで下がっていることは、養生としてとても大切だと書かれているわけです。
まぁ、頭がかっかしていては、それこそ健康に良くなさそうですよね。
 
 

3)丹田呼吸について

『養生訓』に書かれている呼吸について調べていると、『千金方』だけではなく他にも関連する記述をみつけました。
白隠禅師が内観法について記している『夜船閑話』という本です。
そこにはこんなことが書かれていました。
 
心気を丹田におさめよ
至人は常に心気をして下に充たしむ。…
真人の息は、是れを息するに踵(キビス)を以てし、衆人の息は、是れを息するに喉を以てす。…
蓋し気、下焦に在る時は、其の息遠く、上焦に在る時は、其の息促(セマ)る。
 
真人(極めたひと)は踵(キビス=カカト)から息をし、衆人(一般のひと)は喉で息をする、とあります。
気が下にあるときは息が遠く、気が上にあるときは息が切迫する、ともいいます。
これはまさに丹田呼吸の神髄ですね。
 
 

4)『養生訓』の呼吸法のまとめ

『養生訓』における呼吸の要点は、次の3点にまとめることができます。
これを守って、皆さん健康になりましょう!
 
 一、緩やかで静かな呼吸を心がけること
 一、古く濁った気を口から少しずつ吐き出すこと
 一、丹田に気を集めること
 
この養生シリーズ、まだ次回までは呼吸でいくつもりです。
しばしお付き合いください(笑)
 
 

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