知っておくと役に立つ東洋医学的な”病気の見かた” その1

 

東洋医学の基礎知識は、前回ですべての経絡についての解説が終わり、今回から新シリーズの「知っておくと役に立つ東洋医学的な”病気の見かた”」が始まる。
東洋医学的にみて「病気とはどういう状態のことなのか?」、よく言われる「未病って、どういうこと?」、「病気の原因にはどのようなものがあるのか?」などについて、分りやすく解説していく。

 

       目次
1.病気と健康をどうとらえるか
 1‐1.健康とは?
 1‐2.陰と陽のバランスが大切
 1‐3.正気ってなに?
 1‐4.病気と健康の境界線

 

 

1.病気と健康をどうとらえるか


 まず、東洋医学では病気と健康をどのようにとらえているか、ということについて見ていくことにする。

 第1回でも書いたように、西洋医学と東洋医学ではこの病気と健康に対するとらえ方がまったくと言っていいほど違っている。そのあたりから見ていくことにしよう。

 

1-1.健康とは?

まずは西洋医学の病気のとらえ方を復習しながら確認してみよう。

西洋医学の考え方の根本には、「恒常性(ホメオスタシス)」というものがある。変わらないという意味だ。つまり、変わらないものが真実であるという考え方でもある。

そこから正常値あるいは標準値という考え方がうまれ、これによって人間のからだを評価しようとする。この基準から外れている場合を病気と判定し、基準におさまっていれば健康であるとするわけだ。b578ed8844b706627041f6958880c33f_s

これはある意味とてもわかりやすい考え方だが、人間の身体というものはそれほど単純なものではないので、そこに無理も生じる。

例えば血圧。これを数値で線引きするのはかなり難しい。人間、歳をとれば血管は少しずつ硬くなり、血圧は必然的に高くなる。それをどのような年齢でも同じ基準で判定すれば、年寄りはみな高血圧になる。

それに加えて、基準値をちょっと低くすれば(実際のところ、高血圧の基準は徐々に下げられている)、高血圧患者はドッと増えることになる。誰がどうやって基準を作るかということも、じつは大問題なのだ。

一般的な健康の定義としてはWHO(世界保健機関: World Health Organization)憲章のものが有名なので、ここに挙げておく。

「健康とは、肉体的精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。」

“Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.”

 

さらに1999年の総会で健康の以下のように再定義する提案を行っている。(太字が変更点)

「健康とは身体的・精神的・霊的・社会的に完全に良好な動的状態であり、たんに病気あるいは虚弱でないことではない」

“Health is a dynamic state of complete physical, mental, spiritual and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.”

「霊的」と訳されるとちょっと戸惑うが、「スピリチュアル」な部分も健康に含まれるというのは前進だろうし、「動的」というとらえ方は東洋医学的でイイ感じがする。

 

 

1-2.陰と陽のバランスが大切

一方、東洋医学の健康観はどうだろうか?

西洋医学の「恒常性」に対して、東洋医学は「流動性」を重視する。先ほどのWHOの健康の再定義に出てくる「動的」にも通じるものだ。

ひとの体はたえず変化しているもので、変化の中で生じるバランスのくずれを病気ととらえるわけだ。動的バランスというものは数値化することが難しいので、それを五感で感じ取る医学である、ともいえる。

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バランスのくずれをチェックするのに適したモノサシが「陰陽」である。

ものにはすべて陰と陽がある。陽が当たる面と影になる面ということから出たもののとらえ方だ。この陰と陽は常に変化しながらバランスを取っている。

例えば、朝、陽が上ると陽の量が徐々に増えていき、正午にもっとも多くなる。このとき、陰はまったくないわけではない。陰の量は真夜中から少しずつ減っていって、正午に最も少なくなる。正午からは逆に陰の量が増えていき、陽の量は減って、真夜中に陰が最も多く陽がもっとも少なくなるわけだ。このような変化は、季節にもあてはまる。

からだの中で陰陽を見てみると、熱と冷えがわかりやすい。

陽の量が増えすぎるとからだが熱を持つようになる。ひどいと発熱するが、そこまでいかなくても何となく熱っぽかったり、火照っていたりという状態もある。

陰の量が増えると寒く感じるようになる。ちょっと手足が冷える程度から、寒さでガクガク震えるくらいまで、程度はいろいろだ。

これらは陰陽のバランスで説明することができる。

もちろん陰陽のからだのなかでの位置づけはこれだけではないが、この陰と陽のバランスが取れた状態を健康とするのが東洋医学だ。

 

 

1-3.“正気”ってなに?

9157f4aa75d683a3f7db3b18c73b4dda_s東洋医学には“正気”という考え方がある。これは「しょうき」ではなく「せいき」と読む。

正しい気のこと。簡単に言うと病気に対する免疫の機能のようなもの。

からだに邪気(東洋医学的には、細菌、ウイルス、冷え、乾燥などさまざまな病気の原因となる外的な要因のこと)が侵入すると、これに対して正気が闘いをはじめる。

正気が充実していて、邪気も強いと、激しい闘いが起こる。風邪をひいて、高熱が出るような場合のことだ。からだを守る正気がしっかりしていればこそ、高熱がでることになる。

だからこういう場合は、「頑張れ!」という気持ちで見守ってやればいい。漢方薬や鍼灸などで邪気を追い出すのを手助けしてもいい。

食欲がなくなるのは、闘いに専念するためだから、無理に余計な労力を使う消化などをしている場合ではないのだ。

ほとんどの場合、正気がなんとか勝利するが、闘いの後はかなり消耗しているので、正気を回復してあげる必要が出てくる。もちろん邪気が強力で負ける場合もあるのは、言うまでもない。

邪気との闘いに勝てるような強力な正気を充実させておくことも、東洋医学の治療の目的のひとつになる。それが陰陽のバランスを取るということだ。

もちろん、普段の生活のなかでの養生もこの正気を充実させるためのものだ。

 

 

1-4.病気と健康の境界線

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西洋医学では、病気と健康の間にはキッチリと線が引かれている。だから分りやすいわけだ。しかし、ここからは病気でここからは健康という具合にあるところから分けられるものだろうか? そうではないから、西洋医学ですべてが治らないのだ。

東洋医学の病のとらえ方は少し違う。病と健康の間は連続的に続いていると考えるのだ。健康、まあまあ調子はいいけどちょっと気になる点もある状態、少し調子が悪いけど仕事を休むほどではない状態、かなり調子が悪い状態、もうダメだという状態、といった具合にとらえる。

このとらえ方の中にこそ、“未病”という考え方が生まれるのだ。

「なんだかちょっと具合が悪いけど、検査をしても問題がない」、そういうことにも応えてくれるのが東洋医学だと思う。

病と健康を連続的にとらえることこそ、東西両医学の違いかもしれない。

 

続きは次回。

 

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第1回「東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その1

第2回「東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その2

第3回「東洋医学を正しく理解するために必ず押さえておくべきポイント その3

第4回「東洋医学のベースにある2つの考え方 その1

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第6回「ほんとうの自分の干支を知っているひとは意外に少ない?!

第7回「東洋医学を正しく理解するために絶対に知っておくべき気血水のはなし その1

第8回「東洋医学を正しく理解するために絶対に知っておくべき気血水のはなし その2

第9回「東洋医学を正しく理解するために絶対に知っておくべき気血水のはなし その3

第10回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その1

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第14回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その4

第15回「東洋医学エピソードシリーズ2「肺癌末期の女性患者について」

第16回「東洋医学を理解するためのキモ、五臓六腑 その5

第17回「東洋医学エピソードシリーズ3「サンフランのエイズ患者」

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第22回「東洋医学のツボをはずさないために その1経絡

第23回「東洋医学エピソードシリーズ6「ねん挫」

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第25回「東洋医学エピソードシリーズ7「梅の種」

第26回「東洋医学のツボをはずさないために その3 経脈各論1

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第30回「東洋医学のツボをはずさないために その5 経脈各論3

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第42回「東洋医学的日々雑感シリーズ1「暑さ寒さも彼岸まで?」

第43回「東洋医学の活かし方シリーズ1「どうすれば美肌になれるか、東洋医学で考えてみた(1)」

次回は10/10ころ公開予定

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