知っておくと役に立つ東洋医学的な”病気の見かた” その2

 

東洋医学の基礎知識、今回は「知っておくと役に立つ東洋医学的な”病気の見かた”」の第2回目。
東洋医学的にみて「病気とはどういう状態のことなのか?」、よく言われる「未病って、どういうこと?」、「病気の原因にはどのようなものがあるのか?」などについて、分りやすく解説していく。

 

      目次
2.未病とはなにか?
 1-1.未病ってどういうこと?
 1-2.予防とは違うの?
     以下は次回
 1-3.古典に書いてある未病
 1-4.半分は自然に治る?
 1-5.自然治癒力を高める!

 

2.“未病”とはなにか?


 

前回は、東洋医学と西洋医学の健康観について見てみた。

西洋医学では病気でなければ健康、健康でなければ病気であると判断する。いわゆる二律背反的な考え方だ。そこで健康と病気を分けるのが基準値(正常値)だ。

一方、東洋医学の健康観では、病と健康を連続的にとらえる。この連続性のなかの健康と病の間に位置するのが“未病”という考え方だ。

今回はこの未病について少し詳しく見ていくことにする。

 

 

2-1.未病ってどういうこと?

 

heart-665185_640未病について書く前に「治未病」について少し書いておく。

これは漢文で書き下すと「いまだ病まざるを治す」または「未病を治す」となる。つまり未病の段階で治療するという意味だ。

これをよく「未病治」と書いてあるのを見かけるが、これだと「いまだ病を治さず」となって、病気がまだ治っていないという意味になる。明らかに間違いだ。東洋医学に携わる方は気をつけよう。

 

さて本題に入るが、“未病”とは漢文で「いまだ病まず」ということ。つまり病になる前の段階のことを指している。

前回学んだように、東洋医学では病と健康の間を連続的にとらえるわけで、健康より少し病寄りだけど、まだ病にはなっていないところを、未病としているわけだ。

よく誤解するのは、だからといって全く病気でないとは限らないということだ。

「え、なに言ってるの?」と思うかもしれないが、ある病Aがあって、それを放置しておくと違う病Bが発生することがわかるときに、この違う病Bが起こらないように先手を打って治療手段を講じることも「治未病」なのだ。

つまりこの場合は、患者さんは治未病の対象とは違う病であるAの治療のために来院するわけだが、治療者の判断で新たな病気Bの可能性を未然に防ぐような治療を(たぶんほとんどの場合は本人が知らないうちに)受けるということだ。

少しややこしいかもしれない。

 

厚生省(当時)が出している『厚生白書』に、“未病”について書かれたことがある。ある意味、国としての未病に関する見解ということになるので、その一部を紹介する。理解の足しにしてほしい。

——————

この未病の考え方によれば、病気の発症をその予兆によって知り予防するとともに、いったん発病した場合であっても重篤にならないよう早期・適切に処置することが肝要であり、これによって疾病の他の臓器への拡散・転移および疾病の悪循環の防止が期待できるとされる。

(『厚生白書』1997年版)

 

 

2-2.予防とは違うのか?

 

西洋医学には“予防医学”という考え方がある。

そしてまた、西洋医学の方たちは“治未病”をこの“予防”とほぼ同じ意味で使うことが多い。

果たして実際には同じことなのか、それとも違うのかを少し考えてみたい。

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まず、予防医学とは何かを見てみる。

予防医学とは、疾病の発生・経過・分布・消長とそれに影響をおよぼす原因を研究し、疾病の予防を行うことや、病気になりにくい心身の健康増進を図るための学問と定義づけられている。

狭い意味では、「病気になってしまってから治すより、病気になりにくい心身を作りましょう」という考え方に基づいている医学といえる。

 

詳しく調べてみると、予防医学の分類には次の3つがある。

 

第一次予防:疾病の発生を未然に防ぐ行為のこと。健康への啓発、健康増進(生活習慣の改善など)、特異的予防(予防接種、事故防止、職業病対策など)。

第二次予防:重症化の防止。疾病の早期発見と早期治療に分かれる。適切な医療と合併症対策(健康診断、人間ドッグなど)。

第三次予防:疾病の再発防止と社会復帰のための行為。治療、リハビリテーションなど。

 

第一次予防は、本来的な意味での“予防”というものだと考えられる。

ただし、現代の西洋医学において健康への啓発、健康増進が医療の名のもとにキチンと行われているかというと、かなり疑問が残る。

生活習慣病の治療に、率先的に生活習慣の改善を指導しているかといえば、否と答えざるをえないだろう。

これは東洋医学においても同じことが言えて、生活習慣に関して患者にキチンと指導するということの重要性を医療に関わる者はもっと認識すべきだと考える。

もちろん実施している一部の優秀な医師がいることも承知してはいるが‥‥‥。

 

第二次予防のなかの、早期発見、早期治療というのが、一般的に考えられている“予防”という概念とほぼイコールだろう。ただし、正確に言うと、「あくまでも病気をなるべく早く見つけましょう」ということになって、病気にならないように”予防”するのとは違うことがわかる。

また、必ずしも早期発見によって治療効果が発揮されるとは限らないのは、西洋医学がいまだに発展の過程にあることを意味しているのかもしれない。

早期発見のメリットを過大に喧伝し、患者側の不安を煽ることで人間ドッグに代表される予防検査システムを医療の一分野として確立したことは、誰のためのメリットなのかという観点において、疑問に感じられる。

この過剰な予防検査というのは、特に日本の医療現場において顕著(あるいは過剰というべきか?)なようだ。

 

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第三次予防については、一般的な治療とリハビリテーションを含んでいて、これを予防と言われることには、少し違和感を感じるかもしれない。

 

このように見てくると、正確な定義としての“予防”と“治未病”はかなりの部分において重複していることがわかると同時に、一般的に認識されている“予防”と“治未病”のあいだには少し隔たりがあることがわかる。

 

いずれにしても、生活習慣病(ほぼ慢性疾患と呼んでもいいか?)が日本における死亡原因の50%を超えている現状では、患者が病気にならないために普段の生活で何に気をつけ、どう暮らすべきかについて、西洋医学も東洋医学ももっとパーソナルに、また丁寧に対応すべきだということだけは事実のようだ。

 

次回に続く。

 

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