「東洋医学では病気の原因をどう考えるのか」の11回目になります。
前回は、房事過多について説明しました。
東洋医学では性生活に節制がないことを病気の原因のひとつにあげていたんでしたね。
今回は内因の最後で、感情のバランスの崩れが病につながるというお話です。
目次
内因:生活要因や精神的要因などが病気の原因となる場合
A. 飲食不節:不適切な食事や飲水
B. 労逸:労倦と安逸のこと
C. 房事過多:性生活に節制がない
D. 七情の失調:突然・強い・長期の精神的な刺激
D. 七情の失調
1)七情とは?
七情とは怒・喜・思・憂・悲・恐・驚のことでした。
以前にちょっと紹介したことがあります。
この7種類の感情自体は、普通に起こり得るものですね。
ちょっと怒ったり、悲しんだり、驚いたり、普段の生活でよくあることです。
失調とはこれらの感情に関して、通常のバランスを失うことを意味しています。
2)七情の失調のパターン1
例えば、突然にこれらのうちのどれかの感情が強烈に出現することがあります。
悲しくて何もできないなんてこと、誰にでも経験がありますよね。
それを失調と言います。
東洋医学では、そんなことが病気の原因になるんだと言っているんです。

そもそも東洋医学ではココロとカラダはひとつだと考えるんでしたね。
つまりココロの状態が悪くなると、それがカラダに影響しちゃうということです。
でも、それって何となく感覚的にはわかりますよね。
歴史上の人物について調べていたりすると、よく「憤死」というのがでてきます。
あれって、憤りという感情が強烈すぎて、それがもとで死んでしまうということです。
こういうことって結構、昔からよくあることだったんですね。
3)七情の失調のパターン2
それ以外の失調のパターンとしては、長期間にわたって特定の感情が続くっていう状態です。
例えば、ずーっとイライラして怒っていたり、ずーっとクヨクヨと悩んでいたりということ。
普通、そんなに長く怒っていたり、悩んでいたりはできませんね。
ですからこれも、病気の原因になるんです。
そういう感情の失調がどんなふうに病気になるのかというと、
まず臓腑や気血の働きがうまくいかなくなって、
次いでそれが原因で病を発生させるという流れになります。
感情によって、例えば気がどうなるかは違うんだと言っています。
例えば、怒ると気が上がるし、喜ぶと気が緩み、驚くと気が乱れるなどと『素問』挙痛論に書かれています。
さらに、感情ごとに傷つける臓腑が違うとも言っています。
例えば怒ると肝を傷つけ、喜ぶと心を傷つけ、悲しむと肺を傷つけるという具合です。
結構きめ細かく表現されていて、楽しいです。
4)七情が失調しないために?
ではそういう病にならないようにするにはどうしたらいいかというと、
これに対しても東洋医学の古典がキチンと応えてくれています。

『素問』第一篇の上古天真論に「恬憺虚無」(てんたんきょむ)でいると病にならないって書いてあります。
「恬」も「憺」も安らかという意味で、「虚無」はこだわりがないということです。
つまり、心を安らかにして、ものごとに対してこだわりなくいられれば、
病になんかなりようがないというわけです。
なかなか実践しようとすると難しいですけど、そんな境地になりたいものですね。