牛乳について栄養学的に考えてみた

東洋医学×分子栄養学

こんにちは、島田です。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。

突然ですが、骨粗鬆症で困っている高齢者はとても多いんですよね。
骨粗鬆症学会のデータ(2015年)によると、骨粗鬆症の国内の患者数は、女性が980万人、男性300万人。
女性が男性の3倍以上になっています。

そのため、骨を丈夫にするために牛乳を飲んでいる人も多いようです。
2019年の日本における牛乳の一人当たりの年間消費量は31.1kg(日本乳業協会)。
それでも欧米諸国に比べると格段に低いらしいです。

日本人は戦後からずっと、牛乳は健康や骨のために欠かせないと信じこまされてきました。
ですが、
「牛乳って本当に必要なんでしょうか?」
「牛乳を飲めば骨は強くなるんでしょうか?」。

今回は、そういった疑問に栄養学的に答えてみます。

まず最初に結論です。
牛乳の問題点は大きく分けて下記の3つあります。
だから飲む必要はありません

  • 日本人に乳糖不耐症が多い
  • 牛乳のタンパク質がヒトに合わない可能性が高い
  • 牛乳を飲むと骨がもろくなる可能性がある

ひとつずつ説明していきましょう。

日本人に乳糖不耐症が多い

牛乳には糖分が含まれています。
それが乳糖です。

ですから糖質制限をするときには、乳製品も控えるんです。
チーズは発酵させてつくるので摂ってもいいようですけど…。

この乳糖は、ショ糖(砂糖)、麦芽糖などと同じ二糖類に属しています。
単糖類、二糖類は血糖値を急激に上昇させやすい種類の糖質(単純糖質)ですから、できれば基本的に控えたほうがいいですね。

乳糖は摂ったらカラダのなかで分解・消化して吸収しなければなりませんが、実はそれがうまくいかない人もたくさんいるんです。

それが乳糖不耐症です。

これは、乳糖を分解する酵素のラクターゼがない(または活性が低い)ために起こります。
こういう人は乳糖をうまく消化できないので、飲んだ牛乳に含まれている乳糖はそのまま小腸を吸収されずに通過して、大腸に入って腸内細菌によって発酵されます。

100兆以上認識されている腸内細菌は、ヒトが消化できなくて大腸までそのまま運ばれてきたものを発酵によって自分の栄養に変え、さらに場合によってはヒトにとって有益な物質(これは細菌の種類によっては害になる物質だったりもします)を産生してくれます。

乳糖がこの腸内細菌によって発酵されたときに、お腹がごろごろするとか、お腹が張る、下痢するなどの症状が出るんですね。
これが乳糖不耐症の人の症状です。

長い歴史のなかで乳製品を通常の食生活に取り入れてきた地域の人たちには、乳糖不耐症の人は少ないといわれています。

ですけど日本人は基本的に乳製品を摂らないで生きてきた民族(飲み始めたのは戦後から)ですから、約8割が乳糖不耐症だともいわれています。

基本的なことですけど、カラダが消化できないものは食物繊維を除いて極力摂らないほうがいいですね。
これが牛乳を飲まなくてもいいひとつめの理由です。

牛乳のタンパク質はヒトに合わない可能性が高い

牛乳は本来、牛の子供のためのものです。
仔牛はヒトに比べて成長がとっても早いですね。
そういう理由で、牛乳にはヒトの母乳の約3倍のタンパク質が含まれているんです。

これだけ聞くと、赤ちゃんがカラダをつくるのにとても適しているもののように感じるかもしれません。

ですけど、牛乳のタンパク成分の約8割はカゼインという難消化性のものなんです。
ヒトの母乳のタンパク成分は約6割がホエイなので、まったく違うんですね。

この難消化性タンパク質であるカゼインは、腸の炎症を引き起こし、さらにリーキーガット症候群につながりやすい物質です。

また、カゼインは炎症性サイトカイン(細胞間の情報伝達をする物質)の分泌を促進して、その結果として自己免疫疾患やアレルギーが増えるともいわれています。

まだあります。

カゼインにはβ-カソモルフィンというモルヒネ様の作用をもつ物質が含まれているため、依存性を引き起こしやすいこともわかっています。

それと、カゼインはIGF-1(インスリン様成長因子1)を誘導して、がん細胞の増殖にも影響するとする報告もあります。

実際、『乳がんと牛乳』(ジェイン・プラント)という世界15ヵ国で翻訳され400万部の世界的なベストセラーとなった本を読むと、女性の乳がん、男性の前立腺がんと牛乳との関連性について細かく書かれています。

こういったわけで、牛の乳はヒトにとってはあまり良いタンパク質ではなさそうなんです。
これが牛乳を飲まなくてもいい理由の2つめです。

牛乳を飲むと骨がもろくなる可能性

牛乳というと「カルシウム」というイメージが強いと思います。
ほとんどの人が、骨を強くするために飲んでいるイメージですね。

ですが、ヒトのカラダはそんな単純ではありません。

そもそも骨を強くするには、カルシウムだけでなくマグネシウムやリンなどの他のミネラルもいろいろと必要なんです。
リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、タンパク質が結合して、強い骨がつくられます。

またマグネシウムはカルシウムとの割合(栄養療法界隈ではカルマグバランスといます)が重要で、カルシウム1.5〜2に対してマグネシウム1くらいが理想です。

牛乳におけるカルマグバランスをみてみると、カルシウム10に対してマグネシウムが1くらいしか含まれていません。
圧倒的にカルシウム優位の飲み物ですね。

しかも牛乳のカルシウムは、上に書いたカゼインと結合することで非常に吸収されやすくなるんです。

どこかでブログに書いた気がしますが、カルシウムは筋肉を緊張させたり、血管を収縮させたりする方向にはたらきます。

一方でマグネシウムは、筋肉を緩めたり、血管を拡張させたりしてくれます。
つまりカルシウム優位だと筋肉が緊張しやすく、血圧が上がりやすいってことですね。

さらに、牛乳に含まれるリンとタンパク質は血液のpHを酸性に傾けるので、カラダの恒常性を維持するために、アルカリ性のカルシウムを骨から引き出してきて中和する方向にはたらきます。

結果的に骨がもろくなる可能性まであるということ。
骨を強くしようとして飲んだ牛乳が、逆に骨をもろくするなんてビックリしますよね。

疫学調査でも、乳製品をほとんど摂らない国では骨粗鬆症が少なかったり、乳製品を多く摂る人に骨折率が高いことなどが報告されています。
これ、カルシウムパラドックス(他にもいろんなパラドックスがあるんですけど、ここでは省きます)っていいます。

骨を強くするなら、牛乳より海草、豆類、小魚などを摂った方がいいし、ビタミンDを増やすために日に当たることなども大事ですね。

今回はこの辺で。

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