タンパク質量が食欲を決める

東洋医学×分子栄養学

今回は食欲とタンパク質の関係についてです。

科学者たちが語る食欲

僕は以前に『科学者たちが語る食欲』(デイヴィッド・ローベンハイマー、スティーヴン・J・シンプソン共著)という本を読んで、なかなか面白いことが書いてあったので「分子栄養学予防アドバイザー」というセミナーで紹介しました。

一言でいうと「どんな動物(昆虫とかでも)でも、食事で必要なタンパク質量が摂れると、それ以上の食欲が湧かなくなる」ということ。

タンパク質欲を満たしてあげれば、それ以上は食べなくてすむということになります。
ということは、タンパク質の必要量を満たすことが食の目的になっているということです。

結局のところ、タンパク質ってすべての動物にとって毎食毎食しっかり取る必要があるとても大切な栄養素なんだ、ということですね。

もちろんタンパク質はたくさん摂ればいいというものではありません。

他の二つの栄養素である糖質と脂質に比べると、消化吸収過程が複雑で、ゴミも出ます。 摂りすぎると逆に寿命を縮める可能性もあるようです。

摂るべきタンパク質量

それではまず、タンパク質はそもそもどのくらいの量を摂るべきなのかについて書いていきましょう。

基本的な基準でいうと、体重(kg)×1.1(g)というのが目安になります。

通常は、2.0を超えると摂りすぎとされます。
もちろん成長期の子供や妊婦さんは、これ以上取ることも推奨されています。

ここでの注意点は、これがタンパク質の量であること。
例えば牛もも肉100gには19.5g、鶏卵(中玉)1個に8.6g、紅鮭1切に18.6gといった具合です。

それと最近、米国の国立衛生研究所(NIH)などでも研究がさかんになってきている「精密栄養学(Precision Nutrition)」によると、タンパク質は昼や夜より朝食で摂る方が筋肉量などへの影響が大きいそうです。

平均的な日本人のタンパク質摂取割合は、朝:昼:夜=2:3:4になっているので、できるだけ朝に多く摂るようにすべきという時間栄養学からの指摘です。

ところで本書によると、このタンパク質欲を止める唯一の栄養素が食物繊維だそうです。
食物繊維って「ヒトが消化できないもの」ですから、それをエサにしている腸内細菌のための食べ物なんですよね。

腸内細菌がヒトのためにしていることについてはドンドンわかってきていて、如何にそのバランスや多様性が大事かを思い知らされます。

日々の食事の内容次第で腸内環境が刻々と変化することもわかっているので、この地球上でもっとも細菌が密集している場所である腸を良い状態にするためのアドバイスが、患者さんへの食事・栄養アドバイスのキモになることをもっと知っておくべきですね。

PFCバランス

そういう視点でいまの食事の三大栄養素の割合(PFCバランス)をみてみると、主食とされている炭水化物の割合が5割を超えていて、突出していることに気がつきます。

日本人の食事摂取基準(2020年版)では、18歳〜49歳のタンパク質が13~20%、脂質が20~30%(うち飽和脂肪酸が7%以下)、炭水化物が50~65%となっています。

このバランスを定めるためのステップは、タンパク質の量を初めに定めて、次に脂質の量を定め、摂取すべき総カロリーの残りを炭水化物としています。

これって国(厚労省)が推奨しているわりに、科学的根拠がほとんどないという理由で栄養療法界隈ではかなり批判されているのですが…。

バランスという点では、動物は計算なしで「ベスト・バランス」を食べるんだと書かれています。 ということは、「ヒトは動物としての本能をなくしてしまっている」ということもできそうです。

炭水化物の割合を多くして飼育したバッタは「成虫」まで時間がかかり、しかも肥満になったという事実も記されていて、いろいろな意味で示唆に富んでいます。

僕の個人的な意見ですけど、どうも高炭水化物食が生活習慣病のもとになっている気がしてしょうがないのですが…。

食欲人

この本、かなりボリュームの本だったんですけど、それが最近『食欲人』というタイトルになって改めて出版されたみたいです。

タイトルが変わっていたので分からなかったんですけど、妻が「面白そうだよ」というので調べてみたら、ほとんど同じ本(多少、加筆・再編集されているらしいですけど)でした(笑)

最初に出された本の表紙はちょっとアカデミックな雰囲気だったんですけど、いまの出版界は売るためにはいろいろなことをするんですね。

この表紙なら、僕は買わなかったかもしれないです(笑)

今回はこの辺りで。
いつも読んでいただいてありがとうございます。

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