正しい発酵食とは?

東洋医学×分子栄養学

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

私と妻は、ほぼ毎日欠かさず味噌汁を飲んでいます。

特別な健康法をしているわけではありません。
ただ、「ちゃんとした調味料を使う」ことを大切にしているだけです。

味噌汁は、具材以上に味噌や醤油といった発酵調味料の質が、その価値を大きく左右します。
これは分子栄養学を学ぶ中でも、東洋医学の臨床に携わる中でも、強く実感してきたことです。

今回は正しい発酵食について、考えてみます。

健康の土台は「発酵調味料」にある

発酵食というと、ヨーグルトや納豆、甘酒などがよく話題になります。

もちろんそれらも素晴らしい食品ですが、日本人の食生活の軸になってきたのは、味噌・醤油・酢といった「調味料としての発酵食」です。

調味料は、毎日少量でも無意識のうちに体に入ってきます。
だからこそ、ここが本物かどうかは、長い年月で大きな差になります。

実は「発酵していない醤油」がある

あまり知られていませんが、スーパーなどで安価に売られている醤油の中には、ほとんど発酵していないものも存在します。

具体的には、

  • 脱脂加工大豆
  • アミノ酸液(塩酸分解)
  • カラメル色素
  • 香料

などを使い、「発酵したような味」を工業的に再現している醤油です。

法律上は「醤油」と表示できますが、そこに微生物がゆっくり働いた痕跡は、ほとんどありません。

本物の発酵調味料の条件

では、何を基準に選べばよいのでしょうか。
最低限のポイントは、次のような点です。

  • 原材料が「大豆・小麦・塩」のみ
  • 麹菌や酵母、乳酸菌が関与している
  • 仕込みから完成まで1年以上の熟成期間がある
  • アミノ酸液・添加物の記載がない

時間は、発酵にとって最大の贅沢です。
微生物が働き、アミノ酸や有機酸、ペプチドが自然に生成されるには、どうしても「待つ」必要があるんです。

「熟成された発酵」と「急がされた発酵」の違い

ここで、あえて少し踏み込んだ話をしたいと思います。

最近は、麹を大量に使い、数日〜数週間で作られる甘酒や発酵食品も多く見られます。
もちろん、それらがすべて悪いわけではありません。

ただし、「本来の発酵」と同じかと問われれば、疑問が残るのも事実です。

短期間発酵の多くは、

  • 麹の酵素作用(分解)は強い
  • しかし、微生物の世代交代や熟成がほとんど起きていない

という特徴があります。

分解はされているが、育ってはいない
私はこの違いを、とても重要だと考えています。

発酵とは「微生物と時間の共同作業」

本来の発酵とは、

  • 麹菌がデンプンやタンパクを分解し
  • 酵母がアルコールを生み
  • 乳酸菌が環境を整え
  • それらが時間をかけて安定していく

という、微生物同士のリレーのようなものです。

このプロセスを経てできた調味料は、腸内環境に対しても、代謝に対しても、非常に穏やかで深い影響を与えます。

これは、

  • 腸内細菌叢
  • 肝臓での解毒
  • ミネラル利用

など、分子栄養学の視点から見ても理にかなっています。

毎日の選択が、体をつくる

高価なサプリメントよりも、特別な健康法よりも、まず見直したいのは、毎日使う調味料です。

私たち夫婦が毎朝味噌汁を飲むのは、「健康のために何かを足す」より、「余計なものを入れない」ことを大切にしたいからです。

時間をかけて、誠実に作られた発酵調味料には、作り手の姿勢そのものが味に表れます。
そうした蔵が、これからも残っていくことを、一人の消費者として、そして臨床に関わる人間として、心から願っています。

時間を信じて醤油を仕込む蔵の存在

私たち夫婦が、ずっと使い続けている醤油があります。
それが「岡本醤油」さんの醤油です。

最初に選んだ理由は、特別な物語があったからではありません。
原材料がシンプルで、製法がまっすぐで、そして何より味に無理がなかった。ただそれだけでした。

使い続けるうちに感じたのは、この醤油は「主張しない」のに、料理の軸をきちんと支えてくれるということです。
塩辛さや香りで誤魔化さず、素材の味を邪魔しない。

毎日の味噌汁や煮物でこそ、その違いがよく分かります。

最近、こうした時間をかけて発酵と向き合う蔵元の経営が、決して楽ではないという話を耳にしました。
効率やスピードが求められる時代において、「待つこと」「熟成させること」を選び続けるのは、簡単なことではありません。

それでもなお、微生物と時間を信じ、人の都合で発酵を急がせない。
そうした姿勢そのものが、私にとっては「正しい発酵食」の定義に重なります。

発酵とは、健康法である前に文化であり、文化とは、選び続ける人がいてこそ残っていくものです。

特別に何かを語らなくても、毎日の食卓で静かに使い続けること。
それ自体が、こうした蔵を応援する一つの形なのだと思っています。

今回はこの辺で。

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