藤本新風先生との対談

東洋医学×分子栄養学

いつも読んでいただいてありがとうございます。

ブログ&メルマガを週1で始めて1年ちょっとが経ちました。
まだまだ書きたいネタは尽きないのですが、ちょっと違う内容もやってみたくなりました。

そこで、今年まさに高齢者の仲間入りをする筆者の島田が、「死ぬまでに会って話をしておきたい鍼灸師」(笑)と直接お話しして、その内容をブログにするという企画を思いつきました。

さてその第1回目にお願いした方は、北辰会代表の藤本新風先生です。

300年以上続く歴代鍼灸・漢方の家の嫡子としてお生まれれになり14代目を継承されたお父上の藤本蓮風先生の後を継がれ、会員数250名以上の北辰会を引っ張るとても勉強家のステキな先生です。

まずは先生のご略歴を紹介します。

藤本新風先生

1970年5月 藤本蓮風の次男として出生
1991年 大学中退、大阪鍼灸専門学校(森ノ宮医療学園入学) 北辰会入会
1994年 卒業・資格取得と同時に大阪府和泉市にて開業
2005年 扇町漢方クリニック設立に関わり、学術責任者として多くの鍼灸師の育成に携わる
2014年 (一社)北辰会副代表に就任 会員育成に深く関わる     
     藤本家十五代目を継承 十五世 藤本傳四郎新風 (一字襲名)
2018年 (一社)北辰会代表理事に就任

対談内容の要点を書きながら、要所要所で新風先生との会話をはさんでいく形で書いていきます。

藤本家の伝承について

まずはじめに、十五代目を継がれた藤本家の伝承について伺いました。

島田「新風先生、お家に代々伝わる秘伝の書みたいなものはないんですか?」

和風先生「藤本家は鍼を中心に治してきた鍼医者の家系なんです。先々代の和風が古書を集めるのが好きだったので、そういった写本はたくさんあるんですけど、けっこう虫喰いがひどくて…(笑)」

特にこれといった鍼灸の治療スタイルがあるというより、伝承されたそれぞれの先生がご自分で学んだことを治療に具体的に活かしながら、鍼医として代々受け継いで、たくさんの人を治してきた家系ということのようです。

私のように父が脱サラしてから鍼灸を始めたのとは違って、生まれたときから鍼灸が身近にあって、遺伝子に鍼医が組み込まれているのって羨ましいなぁと感じました。

島田「北辰会というのは、お父上の蓮風先生がつくりあげたんですよね?」

新風先生「そうなんです。治療のスタイルは先々代の和風と父の蓮風(現会長)はけっこう違っていて、北辰会方式は蓮風会長がつくったものです」

病症把握や弁証は中医理論を使いながら、古代鍼や日本の伝統的な技術である打鍼などをしっかりと臨床に組み込み、非常に詳細な四診を駆使して病態を把握し、1〜2穴の少数穴で治療するというスタイルはすごいの一言です。

古典と日本の鍼灸について

私の知っている北辰会の先生は、みなさんすごく勉強熱心な方ばかりなので、その辺りを尋ねてみました。

島田「北辰会の先生方はとても勉強熱心で、古典などもすごく勉強されていますよね」

新風先生「そうですか? 人によってだと思いますが、蓮風会長の時代から、古典も重視してきています」

島田「だって講師のテストまであるんですよね。それって会のレベルを保つのにとても大事なことだと思うんですけど、かなり厳しいんでしょ?」

新風先生「そうですね。講師のテストはけっこう厳しくしています」

島田「僕は鍼灸学校で教えていたときに言ってたんですけど、『美容師の人は研修期間に毎日のように終電近くまでカット練習をしているけど、人の命を預かる鍼灸師がなんで鍼やお灸の練習をしないんだ』って(笑)」

新風先生「それはまさにそうですね!(笑)」

新風先生とお話しさせていただいて、鍼灸に対する熱意と情熱をすごく感じたんですけど、だからこそ日々勉強に励んで、もっと患者さんを治せるようになろうとしているんだと感じました。

この後、話は古典から伝統鍼灸におよびました。

島田「日本で古典というと『素問』『霊枢』『難経』ですけど、これってどう思いますか?」

新風先生「確かに素問、霊枢、難経は大事ですけど、その後の伝統もしっかりと辿るべきだと思うんですよ。金元代の医学や明清代の医学、その延長線上にある現代中医学などを正しく位置付けることも大事ですよね」

島田「そうそう、素問、霊枢、難経で止まってないで、現在やられている中医学も含めて伝統医学としての東洋医学ですよね」

新風先生「そういう意味では、お父様の隆司先生が日本経絡学会の名称を日本伝統鍼灸学会に変えたのは本当にすごいことだと感じております」

島田「そうかもしれません。父は師匠の丸山昌朗先生の意思を継いで古典、刺絡、教育の3つが大事だと言っていました」

新風先生「刺絡についてもうちの父と共通点があったんですね」

私の父と新風先生のお父様の蓮風先生とは、いろいろと共通点があったんです。
そのひとつが刺絡の治療への位置付けでした。

話はさらに診断技術の問題に移っていきました。

島田「新風先生はいつから蓮風先生の教えを受けていたんですか?」

新風先生「鍼灸学校に入ってすぐからです。毎週1回、治療を見ていました」

島田「見て学ぶですね」

新風先生「そう、基本見るだけです。ですが、これはこれで意味深いものだと感じております。島田先生も隆司先生の治療を見て?」

島田「私の父は身体を壊して断食と鍼灸で治ってこの道に進んだんですけど、鍼灸学校の入学が30歳でした。だから鍼灸治療はそんなにすごかったわけではないです」

新風先生「ではどんな治療を…」

島田「井上雅文先生の脈状診を習いました」

新風先生「人迎気口診ですね!私もじつはあれを時々臨床応用するんですよ」

島田「本当ですか?」

新風先生「外感か内傷か迷うときってありますよね。そういうときに人迎気口を使って診ることがあります」

島田「そうでしたか!それはなんだか嬉しいなぁ」

共通の脈診法にたどり着いていたことに嬉しさを感じつつ、この先生は本当に勉強熱心な方だとの印象を強くしました。

脾胃の大切さ

胃腸(脾胃)の大切さについても話題に上りました。

島田「僕は分子栄養学をやっていて、新風先生にもメルマガを読んでいただいていますが、栄養を摂っても吸収できない人ってかなり多いのに気付かされます」

新風先生「はい、少しずつ勉強させていただいています。でもやっぱり脾胃が大事なんですよね」

島田「そう実感します。鍼灸師向けのセミナーで脾胃論について話したこともあるんです。『やっぱり李杲先生はすごい』って(笑)」

新風先生「李杲先生のは『脾胃論」ももちろん学びになりますが、『内外傷弁惑論』の方がより面白いですよね」

島田「そうそう、本当に。ところで僕が学んでいた分子栄養学の会ではストレスで副腎疲労になっている人に補中益気湯が良いって言われてました。あれって温めて熱を取るという面白い処方ですよね」

新風先生「そうです。甘温除大熱ですね」

金元医学の代表的な治療家のひとりである李杲(李東垣)は、脾胃が大事だということを理論の中心に置いていた人で、代表的な著作は『脾胃論」、『内外傷弁惑論』などで、彼が生み出した有名な処方が補中益気湯です。

この処方のキモは、『素問』至真要大論の「労者温之、損者温之」を根拠にして、温剤で発熱を治すという一見矛盾した治療法を唱えている点です。

古典に話が及んでもどんどん話題が広がっていくのが、お話ししていてとっても楽しかったです。

食事指導について

分子栄養学とも絡む重要な話題である、食事指導などについてもいろいろとお話しさせていただきました。

島田「ところで、北辰会では治療後の生活指導もかなりシッカリとされるとお聞きしたんですが…」

新風先生「そうですね。治療後の指導にもしっかり時間をかけます」

そう言って患者さんのカルテを持ってきて見せてくれました。

島田「病証のチャート図まで入っているんですね。やっぱりすごいなぁ」

私は以前、北辰会の関東支部ができたときの蓮風先生の実技講演を見に行ったことがあるんです。
そのとき患者さんの問診や診察に1時間以上かけていることや、非常に詳細な診察カルテを見てビックリした覚えがあります。
やはりそれは受け継がれて、さらに進化していたんですね。

島田「先生は患者さんへの食事アドバイスってされていますか?」

新風先生「食が病因となっている患者さんには、食事の指導もするようにしています。どんな食材を摂ったら良いかとかですけど…。これこれをやめてくださいだけではなかなか難しいので、なるべく代わになるものを提案するようにしています」

島田「なるほど、代わりのものを示すって良いことですね。さすがです。何かをやめるって難しいことですもんね」

新風先生「そういえばブログを拝見していて、「遺伝子ですべては決まらない」というのが面白かったです」

島田「そう、エピジェネティクスですね。面白い考え方ですけど、あれって東洋医学の先天の精と後天の精のことですよね。僕は分子栄養学をやってみて、改めて東洋医学って凄いなぁって感じました」

エピジェネティクスとは、遺伝子だけですべてが決まるのではなく、遺伝子の発現には環境因子が影響を与えるという考え方です。
そのなかでもっとも重要なのは栄養だと考えられているんです。
参考にブログ記事のリンクを貼っておきます。

島田「分子栄養学で何か気になることなどありますか?」

新風先生「やはり昔はなかったものが最近の食べ物に含まれていたりすることでしょうか。例えば水銀や添加物などです。そういうものに対処することは、古来のの東洋医学では想定していないと思うので…」

島田「なるほど、そういう意味でも東洋医学と併せて使う意味があるかもしれませんね」

話は2時間ではとてもたりず、2軒ハシゴをして飲みながらさらにいろいろなお話をさせていただきました。

この新風先生との対談を通じて、東洋医学と分子栄養学の両方を使って患者さんのためになるようなことができるようにさらに頑張ってみたいという意を強くしました。

藤本新風先生、ありがとうございました。

今回は以上です。
もし分子栄養学に興味を持ったら、下のボタンから私のセミナーの詳細を見てみてください。

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