最近、「NSAIDsの長期使用で認知症のリスクが12%低下する」という論文を読みました。
それ以外にも帯状疱疹ワクチンが認知症のリスクを下げるという報告や、アルツハイマー病の原因物質だとされているアミロイドβが適量のアルコールでも増えるという論文などが相次いで発表されています。
ということで今回は認知症について考えてみたいと思います。
論文の内容
まず論文の内容を紹介します。
NSAIDsというのは非ステロイド性抗炎症薬のことで、いわゆる一般的な痛み止めですね。
NSAIDは、抗炎症作用およびアミロイドβの沈着を低下させる作用によって、認知症リスクを低減する可能性があるといわれているのが、本研究の背景になっています。
この論文は、オランダ・エラスムスMC大学医療センターのIlse Vom Hofe氏らによる研究で、結果はJournal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2025年3月4日号に掲載されています。
ベースラインの時点で、認知症のない11,745例(女性59.5%、平均年齢66.2歳)を分析対象としています。
参加者は非使用、短期使用(1ヶ月未満)、中期使用(1~24ヶ月)、長期使用(24ヶ月超)の4グループに分類され、定期的に認知症のスクリーニングを受けました。
主な結果は以下のとおりです。
平均追跡期間14.5年の間に、9,520人(81.1%)がNSAIDsを常時使用しており、2,091人(17.8%)が認知症を発症しました。
NSAIDsの使用は、長期使用者における認知症リスクの低下と関連しており、短期使用または中期使用ではリスクがわずかに上昇しました。
NSAIDsの累積投与量と認知症リスクの低下との関連は認められませんでした。
結論としては、NSAIDsの累積投与量ではなく長期使用が、認知症リスクの低下と関連していたとされています。 これは、抗炎症薬の大量投与ではなく、長期投与が認知症予防に有効である可能性を示唆している、ということです。
認知症と慢性炎症の関係
この研究の結論は、分子栄養学でいわれていることからすると当然です。
そのことについて参考にすべき(日本語に翻訳されている)書籍としては、
『アルツハイマー病の真実と終焉』(デール・プレデセン)があります。
本書によれば、アルツハイマー病などの原因であるとされるアミロイドβは、炎症や毒、栄養素の不足などによって脳に溜まると考えられているからです。
簡単にいうと、アミロイドβは認知症の原因物質ではなく、悪い生活習慣の結果として脳に溜まったゴミなんです。
だから、いろいろなアミロイドβを減らす薬の開発が良い効果を生まなかったのも当然のことです。
ゴミを掃除するより、ゴミが出ないようにすることが根本原因の解決になるからですね。
NSAIDsは炎症を抑えますから、これを長期的に服用するとゴミを生む原因のひとつである慢性炎症が抑えられるので、認知症の発症リスクが下がるわけです。
でも、炎症はゴミを生む原因のひとつでしかありません。
そのほかのゴミの代表的なものである毒(これは添加物や水銀、カビ毒などのこと)や栄養素の不足(つまり食事の問題)にも対処する必要があります。
ということで、認知症は治療よりも予防が大事だということがわかってもらえたと思います。
このあたりことについては、以前に書いた下記の記事を参考にしてください。
NSAIDsを飲むよりもっと大事なこと
じゃあ何が大事かというと、予防です!
「病気になったら病院に行って保険で安くお医者さんに診てもらって、薬を飲めばいい」という思考から抜け出す必要があると思います。
そのためには何をするべきか?
それは、日々の生活を見直すことです。
特に食事が大事です。
「あぁ、それ面倒」と思ったあなた、ここから先は読まなくて結構です。
そしていますぐ、僕のメルマガの登録を解除しちゃってください(笑)
でも、不健康寿命を少しでも短くしたいと思うのなら、読み続けてくださいね。
もう少しだけ、今回の主題に関連したことを書きます。
NSAIDsや帯状疱疹のワクチンで認知症のリスクが下がるのは結構ですけど、それは根本的な原因を解決することになっていないだけでなく、副作用も考慮しなくてはいけないことになります。
痛み止め(NSAIDs)を処方されると、よく一緒に胃薬が出されますね。
これって何故でしょうか?
NSAIDsはシクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素を阻害することで、大きく分けて2つの作用を発揮します。
ひとつ目は鎮痛効果。
これは痛みの原因である炎症性のプロスタグランジンの生成を抑制することで起こります。
もうひとつは副作用。
これは胃の粘膜を保護するのに必要なプロスタグランジンの産生も阻害してしまうことが原因です。
これらのことによって胃を防御する機能が低下して、胃潰瘍リスクが10倍に上昇してしまうんです。
だから胃薬を一緒に飲むんですけど、胃薬は胃酸の抑制と胃粘膜保護が目的の薬です。
胃粘膜の保護はいいかもしれないけど、胃酸が抑制されると栄養学的に見て困ることがいろいろとあります。
そのなかでも重要なのは、タンパク質やミネラルの吸収が低下することです。
これがさっきのゴミを生む原因のひとつである栄養素の不足につながるわけです。
分かりやすくひとことで言うと、ゴミを生む原因のひとつを抑えるために使う薬の副作用で、ゴミを生む違う原因が生じてしまうということですね。
ということは原因の根本的な解決にはなっていないということになります。
最後に、これも過去記事ですけど予防のための参考になる記事を挙げて、終わりたいと思います。
今回もお読みいただきありがとうございます。