暑い日が続いていますが、お元気ですか?
ところで、患者さんに聞いてみると、いちばんなりたくない病気は認知症だという方が多いんですよね。
これまでもいろいろと認知症について書いてきましたが、いままでの常識を覆すようなことがあったので、そのことに絡めて少し書いてみます。
認知症の原因物質
認知症の原因物質はアミロイドβだとされてきました。
これにはエビデンスを示す有名な論文があります。
2006年にNature誌に発表された「A specific amyloid-β protein assembly in the brain impairs memory」(脳にみられる特殊なアミロイドβタンパク質集合体が記憶を障害する)です。
いままで2000以上の論文に引用されたとても有名かつ重要な論文です。
その論文が昨年6月(2024年)に撤回されました。
理由はデータの改竄。
現在も読むことができるんですけど、「RETRACTED ARTICLE」(撤回された論文)とタイトルの頭に大書されています。
このことが即座にアミロイドβ原因説を否定することにはならないけれども、この物質を脳内から減らせば認知症が改善するという目的で開発されている各種の薬については、抜本的に考え直す必要がありそうな感じですね。
原因ではなく結果?!
以前記事にも書いたように、分子栄養学の世界でいわれてきたのは「アミロイドβは原因ではなく結果だ」ということ。
つまり、悪い生活習慣や栄養不足、毒などの影響から脳を守るために作られる物質がアミロイドβだという考え方です。
いままでアミロイドβを減らす効果があるとされる薬が開発されましたが、実際に減るけれども認知症そのものはほとんど改善されないという結果に終わっています。
そういうことを鑑みると、「アミロイドβは原因ではなく結果だ」という説の方が事実に近いのかもしれないと思われてきます。
もしそうだとすると、デール・プレデセン先生が指摘するようにその原因は大きく分けると3つ。
栄養不足(質的な栄養失調のこと)、毒(日本人の場合魚介類から摂る水銀とカビ毒がその代表)、そして慢性炎症です。
興味のある人は、過去に書いたこちらの記事を読んでください。
あと、最近話題になっているのは単純ヘルペス原因説。
これも、炎症という観点で考えれば、原因のひとつとして納得できるものです。
認知症の患者の血液データの多くにCRPの軽度の上昇が見られると指摘する臨床医がいることも、それを裏付けることになるかもしれませんね。
じゃあ、どうやって予防するのか?
あの有名な医学系雑誌のランセット誌に認知症委員会という組織があります。
そこでは毎年、「認知症の予防」に関する最新知見を公開しているんです。
その2024年の最新アップデートでは、新たに2つのリスク因子(視力低下と高LDLコレステロール血症)が加わって、計14の修正可能なリスク因子を特定しています。
これらに対して対策を講じることで、認知症の約45%が予防または発症を遅らせられる可能性があるとされています。
14のリスク因子は以下の通りです。
コメントは私の個人的な感想などですので、あくまでもご参考までに。
- 教育水準の低さ
- これが本当に認知症の原因になるのか、少し調べてみたいと思います
- 難聴
- 難聴や13にある視力低下をそのまま放置しないことが認知症の予防には大事だとされています
- 高LDLコレステロール血症
- LDLを必要以上に下げることは、分子栄養学的な観点からはあまりお勧めできません
- うつ病
- 「うつ病は炎症である」という説もあり、これは分子栄養学的にはかなり頷ける話です
- 頭部外傷
- コンタクトスポーツが慢性外傷性脳症(CTE)を起こし、それが認知症のリスクとなるのはもはや周知の事実です
- 運動不足
- 誰にでもカラダに良い運動はありませんから、その人の栄養状態によってすべき運動は異なります
- 糖尿病
- 喫煙
- やはりこの2つは改善したいですね
- 高血圧
- 血圧は加齢に伴って上がっていくのが当然なので、いろいろな意味であまり下げすぎるのもどうかと思います
- 肥満
- 慢性炎症の原因にもなりますので、気をつけたいことのひとつですね
- 過度のアルコール摂取
- アルコール好きとしては辛いですが、「過度」は良くないですね
- 社会的孤立
- 社会との繋がりはとても大事なことです
- 視力低下
- 難聴のところでも書いたとおり、放置しないほうが良いとのことです
- 大気汚染
- これは毒の一種ですから当然です
認知症を予防するために、ぜひ参考にしてみてください。
今回はこの辺で。