前回は、代謝とは何か、代謝が悪いというのはどういうことか、についてみてみました。
まだ読んでない方は、下記のリンクからどうぞ。
まず代謝とは「AをBに変えること」で、この化学反応には酵素と補酵素が必要です。
酵素はタンパク質でできているし、補酵素はビタミンやミネラル。
これら必要な栄養素が足りないと、代謝が回らなくなるんでした。
ただし、足りないものを理由も考えずに補っても仕方がないので、その理由を次の3つに分けて考え、原因別に対応するといい、というお話でした。
①摂ってない
②摂ってるけど吸収できてない
③摂って吸収できてるけど浪費してる
分子栄養学的には、これだけ気をつけるだけでも代謝は上がります。
代謝を上げるために必要なもうひとつの要素
ただ、代謝を上げることを考えるときに、エネルギー消費量の問題はとても大事です。
もちろんエネルギー消費量=代謝ではないですけど…。
代謝が落ちてしまって同じ量の食事をしているのに太ってしましまうという状態の場合、食事量を減らすか、運動量を上げるかと考えがちですよね。
その運動量って次のうちどれでしょうか?
基礎代謝量、食事誘発性熱産生、身体活動量。
総エネルギー消費量は、大きくこの3つで構成されます。
そのうちの60%を占めている基礎代謝を上げるために、前回書いた酵素や補酵素をしっかり供給してあげることが大切なんですね。
それ以外でいうと、身体活動量が30%を占めています。
これの内訳は大きく2つで、家事などの日常生活活動と(いわゆる)運動です。
毎日、定期的にジムで運動をしている(あるいはできる)環境にあるなら別ですけど、週に1〜2回程度の運動習慣であれば、圧倒的に日常生活活動の内容を見直すべきなんです。
近年では、家事などの日常生活活動に分類される非運動性身体活動によるエネルギー消費(別名NEAT:non-exercise activity thermogenesis)と肥満との関連が注目されてきています。
肥満者と非肥満者を比べると、肥満者は歩行なども含めた立位による活動時間が、平均で1日約150分も少なかったという報告もあります。
総エネルギー消費量が多いか少ないかは、身体活動量によって決まるんですね。
つまり、なるべく座位の時間を減らして、家事などの日常生活活動を積極的に行うことが、肥満予防のポイントだということがいえます。
栄養素は基礎代謝に関わるのでとても大切で、そのためには酵素の材料であるタンパク質や、補酵素として大事なビタミン(特にB群)やミネラル(特にマグネシウム)を吸収しやすいようにしっかり補給するべきです。
ですけど、一日中座ってサプリで栄養を補給すればいいというわけではないんです。
結局は食事で摂ってたくわえたエネルギーと、基礎代謝や活動代謝、食事代謝で消費するエネルギーとのバランスが取れているかどうかが問題なんですね。
では具体的に何をすべきか?
ということで、代謝とかエネルギー消費という観点では、(週に数回の)特別な運動よりも、普段の生活での動きの方が重要だということがわかったと思います。
では具体的にどうすればいいのかというと、極力座らないようにして過ごすことと、なるべく歩くことです。
もちろん、筋肉は血糖値の安定のために必要です。
ですが、マシンやウエイトを使ってガンガン鍛える必要はありません。
動物としてヒトが得意なのは、持久的な歩行能力だといわれています。
つまり、立ったり歩いたりすることによって、必要な筋肉をつけることが大事なんですから、自重トレで十分です。
普段使わない筋肉をムダに肥大化させるより理にかなっていると思います。
代謝を上げるために必要な栄養素
最後に代謝に必要となる栄養素について、簡単にまとめておきましょう。
まず、酵素の材料になるタンパク質不足を消化のことを考えながら解消すること。
いつも書いているとおり、吸収を助けるいちばん大事なことは、よく噛むことです。
ビタミン・ミネラルの補給をしましょう。
特に代謝に必要になるビタミンはビタミンB群(B群は協同で働くのでできればセットで摂りましょう)。
それからマグネシウム。
これもいつも書いているように、ニガリで飲み物に入れて摂るようにしましょう。
吸収が悪い(だから酸化マグネシウムは下剤として使われるんですね)ので、逆にいうと便秘がちの人には効果的ですね。
女性の場合、足りていなくて慢性炎症やカンジダがなければ、鉄。
サプリは海外製のものがオススメです。
それから前回も書きましたが、栄養素を浪費するようなものを摂ったりするのは避けましょう。
項目だけ再掲しておくと、添加物やアルコール、他のミネラル(鉄、カルシウム、リン、亜鉛、ナトリウム、カリウムなど)の過剰摂取、そしてストレス。
せっかく摂っても、浪費していては元も子もありません。
オススメの書籍
代謝に関してオススメの書籍を挙げておきます。
『代謝がわかれば身体がわかる』(大平万里)です。
新書版ですけど結構ボリュームがありますが、なかなか面白く代謝の話を書いていくれています。
分子栄養学を本気でしっかり学びたいという方には、是非読んでほしいですね。
この本がどんな本かが分かる部分を少しだけ引用します。
世の人は「結果的に問題がなければ、途中経過なんてどうでもいい」と感じる「結果重視派」と、「言われてみれば、どんな過程でそうなったのだろう」と想像を広げる「原因追求派」とに分かれる。
私たちの身体が物質でできている以上、身体における「原因と結果」を説明するには、化学の視点が不可欠である。
「結果重視派」ではなく「原因追求派」の立場で「化学の視点による身体のイメージ」を持てる人が多くなってほしいところだ。そういった願いが、本書を書く動機となっている。
今回はこの辺で。