いつも読んでいただいて、ありがとうございます。
さて今回は、読書案内的「東洋医学×分子栄養学」の第2弾です。
先日、久しぶりに鍼灸学校の学生さんと話す機会があって、分子栄養学を始めるにあたってどんな本から読んだらいいかをアドバイスしたときに紹介した本なので、少し説明を加えようと思ったのがキッカケです。
私が分子栄養学を勉強させてもらった臨床分子栄養医学研究会の代表である医師の宮澤賢史先生の著書。
最初に断っておきますが、「あくまでも食事が基本で、サプリを飲まなくてもよくなることが最終目標だ」と師匠は言っています。
でもせっかく飲んでるのなら、効いた方がいいですよね!
サプリメントが効かない理由
はじめに結論から書くと、本書に書かれている「サプリが効かない理由」は次の5つです。
❶効果が得られる量のサプリメントを使っていない
❷自分に必要なサプリメントがわかっていない
❸サプリメントの消化、吸収について考えていない
❹サプリメントを邪魔する要因を考えていない
❺食事をないがしろにしている
この項目を見ただけでも何となく頷けるかもしれませんが、以下にそれぞれについて簡単に説明を加えていきます。
サプリの量が効果を左右する
栄養素には欠乏症という考え方があります。
基本的に「日本人の食事摂取基準」という5年ごとに出る資料のなかで国が推奨している栄養素の量は、この欠乏症にならない最低限の量です。
日本においては、ほとんどのサプリがこの考え方に従っているいってもいいかもしれません。
例えばビタミンCだと100mg。
これだけ取れば欠乏症の壊血病にはならないということ。
確かに壊血病は、ひどい場合には全身の血管から出血して死に至る病です。
ただ、風邪の予防やがんの治療にビタミンCを使うということになると、この量の10倍あるいは100倍もの量が必要になってきます。
こういった量については、水溶性ビタミンなのか、脂溶性ビタミンなのか、ミネラルなのかによっても傾向が違ってきます。
逆にそれだけの量を飲まないと効果がみられないので、その適量(専門的にはドーズレスポンスと言います)を知らないといくら毎日せっせと飲んでも効かないことになりかねません。
分子栄養学では、欠乏症予防のための量よりはるかに多い量の栄養素をサプリメントで飲んだりすることによって、病気さえも治療できる効果が発揮できるということなんです。
コンビニなどで売っているサプリに入っている栄養素の量は、基本的にはこの欠乏症予防のためのわずかな量に過ぎません。
だから、そんな量では効果を感じないはずです。
必要な栄養素も量も人によってまったく異なる
これは個別性といって、栄養療法に限らず治療的な行為を行う場合には、当然といっていい事実ですよね。
つまり、性差、年齢、体格、不調のある部位、症状などによってサプリの使い方はまったく異なるんです。
まず、自分にはどんな栄養素が不足しているのかを知らなければなりません。
分子栄養学では、これを推測するために血液データや毛髪検査、尿の有機酸検査や便検査など、いろいろな検査を使います。
私が提唱している鍼灸と分子栄養学の連携は、主に血液データと四診を合算します。
そういったことを無視して、とにかくたくさん取れば良いとか、他人が効いたからという理由でサプリを飲んでみても、効果が現れないだけならいいのですが、かえって体調を崩す場合もあります。
サプリにはカプセルや錠剤をつくるために、どうしても必要となる添加物などがあります。
ですからむやみにたくさん摂ると、それを解毒・代謝するために肝臓に負担がかかったりすることもあるんです。
つまり最適なものを最適な量で取らなければなりません。
サプリで体調を崩したら、元も子もないですもんね。
サプリメは吸収されて初めて効果を発揮する
これはつまり、胃腸の問題がとても大切だということです。
東洋医学でも同じことを言います。
なんといっても脾胃です。
カラダにとって大事な栄養素をいくら摂っても、それが吸収されなければムダに排泄されて意味をなさないばかりか、未消化の栄養素は腸を荒らしたりする場合もあり、逆に害にもなることを知っておきましょう。
つまり自分の胃腸の調子や状態を知ることが大事なんです。
もし胃腸が悪くて吸収できないのなら、サプリを飲む前に胃腸の状態を改善する必要があります。
問題が胃にあるのか、腸にあるのかは、いろいろな方法で推測が可能です。
例えば胃酸の出が悪いのなら、胃酸の出を促すような食事の方法をアドバイスします。
また治療には適切な順序があります。
それを知らないと、治療効果を上げることができないのは鍼灸治療も同じですよね。
サプリの効果を邪魔するものがいろいろある
サプリメントの効果を邪魔するものの代表は、炎症と毒です。
炎症というのは、カラダのなかでくすぶっている慢性炎症のこと。
代表的なものは歯周病や上咽頭炎、萎縮性胃炎、脂肪肝、腸内環境の悪化など。
もちろん、免疫という観点では急性炎症が大事な役割を果たしていることは、いうまでもありません。
毒の代表は水銀です。
それ以外にも高温多湿な日本だと、カビ毒なども毒として作用します。
カビは熱で死にますけど、カビ毒は熱には強いので困るんです。
私の臨床経験でも、たまにカビ毒の影響で体調を崩している患者さんを見かけることもありますよ。
こういうものがあるとサプリが効きません。
というより、代謝全般が落ちてしまっていることの方が問題ですけどね。
そういう場合は、解毒を促すような食事や栄養素のアドバイスが必要になってきますが、ここでは詳細については省きます。
とにかく食事が基本
宮澤先生がいつも強調するのは、とにかく食事が基本だということ。
どんなに良いサプリを飲んでいても、食事がメチャクチャではどうにもなりません。
そして食事をコントロールできるのは、本人だけ。
だからこそ「自分の健康は自分で守る」という意識がとても大切になります。
どうも最近の日本では、国民皆保険で守られている感覚が強いからなのか、普段の生活は好き勝手にして、いざとなれば病院に行って薬をもらえば何とかなる、と思っている人が多い気がします。
そういう人の意識を変えていくことも、医療人としての鍼灸師の役割かもしれませんね。
本治が大事
本書には分子栄養学の基本原則がキチンと書かれています。
考え方の中心に、「病の根本原因に対処すべきだ」ということが据えられています。
これはまさに東洋医学の「本治」という考え方と同じだと思います。
そのためには局所だけにとらわれず、俯瞰的にカラダを診る必要があります。
分子栄養学には分子レベルのミクロの視点が必要ですが、そのことによって全体をみるマクロの視点が失われると「人を診る」という医療本来の大切な目的を忘れてしまう可能があると思っています。
ある意味、栄養療法の基本が凝縮されている本なので、私はいまでもときどき読み返すようにしています。
分子栄養学やサプリメントに興味のある方は、Amazonのリンクを貼っておくのでぜひ読んでみてください。
『あなたのサプリが効かない理由』(宮澤賢史)
読んでみて、鍼灸と合わせて使いたくなったら、私と一緒に学びましょう!
では、今回はこの辺で。
ちょっと告知があります。
私はこの【東洋医学×分子栄養学】を鍼灸師の先生方に広めていきたいと思っています。
そのためには、専門学校で1コマ講義をするとか、流派などの勉強会で話すことはいといません。
ご要望があれば、どこへでもいく覚悟ですので、お気軽に下のボタンからお問い合わせください。
私の「東洋医学ドック」(栄養アドバイス)を受けたい方は、下記のお申し込みフォームよりご依頼ください。 リアル(北鎌倉で受診)でもオンラインでもお受けしています。