今回はビタミンDという栄養素が老化を抑制する可能性があるという話です。
口から摂らなくても、陽に当たるとつくられるビタミンですね。
ビタミンDって知ってますか?
以前はカルシウムの吸収を助け、丈夫な骨を作るのに役立つ効果があるといわれていました。
だから不足すると、骨粗鬆症やくる病などのリスクが高まるわけ。
あのアルプスの少女ハイジに出てくるクララは、はじめはくる病で車イスを使っていたんけど、ハイジのいる田舎に移って、太陽をたくさん浴びて、くる病が治って歩けるようになったという設定だったとか…。
このビタミンD、最近ではもっとも注目されているビタミンと言ってもいいくらい研究が進んでいて、「これはもうビタミンというよりホルモンといった方がいいのでは」などといわれている大事なビタミンなんです。
骨を強くする以外に、免疫状態を良くしてがんを予防したり、万病のもとなんて最近言われている(慢性)炎症を抑えたり、うつ病を予防したりと、とにかく色々な効果が分かってきています。
ビタミンDの欠乏は世界的に問題となっていて、北欧諸国などでは日光浴不足によるビタミンDの欠乏を補うために、サプリメントの摂取が積極的に行われています。
日本でもかつてはビタミンDが豊富な魚介類の摂取や積極的な日光浴によって比較的充足していたと考えられていますが、最近では乳幼児・妊婦・若年女性・寝たきり高齢者等を中心に、ビタミンD不足が指摘されています。
ビタミンDが老化を抑制する!?
そんな大注目のビタミンDですが、最近(今年の5月)になって人間の生物学的な老化を遅らせることができる可能性のあることが、新たな臨床試験で示されました。
ビタミンD3(一般的なビタミンDのサプリです)を毎日摂取している人は、染色体の末端にあってDNAを保護する役割を果たしているテロメアの摩耗が抑えられていたことが確認されたというんです。
研究結果は、「American Journal of Clinical Nutrition」という雑誌に掲載されました。
よく靴ひもの先端をカバーするプラスチック製の覆いに例えられるテロメアは、加齢とともに劣化することが分かっています。
そのため研究者たちは、暦年齢ではなく実際に身体がどれだけ老化しているかを表す生物学的年齢の指標としてテロメアを用いているそうなんです。
この臨床試験では、ビタミンD3サプリおよびオメガ3脂肪酸サプリの効果の検証を目的とした大規模臨床試験のVITAL試験(参加者数は25,871人)のデータが使われました。
参加者はビタミンD3(1日2,000IU)またはオメガ3脂肪酸(1日1g)のサプリを毎日摂取する群にランダムに振り分けられます。
今回はこのうち、試験開始時とサプリの摂取開始から2年後および4年後にテロメアの長さが評価された1,054人を解析対象としています。
一般的にテロメアが短くなると遺伝子の安定性が低下し、がんや心疾患、死亡、慢性疾患のリスクなどが高まると考えられているんです。
臨床試験からは、ビタミンD3サプリの摂取群で、プラセボ摂取群と比べて4年間のテロメア短縮が有意に抑制されていたことが明らかになりました。
一方のオメガ3脂肪酸摂取群では、テロメアの長さに対する明確な効果は見られなかったそうです。
ビタミンDを増やすには?
ところで話は変わりますが、この前遊びに行ってきたベトナムのダナンというビーチリゾートでは、朝日が上る前から大勢の現地の人が海岸に押し寄せて、海に浸かったり、ヨガや体操をしたり、はたまた砂に身体を埋めてデトックスしたりと毎日大賑わいなんです。
現地の友だちに理由を聞いてみたら、「日光に当たるとビタミンDが増えて健康になる」というというのを信じて、健康のために朝早くから仕事の前に海に行くんだそうです。
もちろん陽に当たって日焼けするのはイヤだという女子は少なからずいるようで、泊まったホテルの若い女性スタッフも、中庭を横切る際に顔を覆って小走りに横切ったりしていましたから…(笑)
とにかく、日光に当たると皮下のコレステロールからビタミンDがつくられるので、あまりにも太陽光を避けるのは身体のために良くないということになります。
ちなみにどのくらい陽に当たればよいかというと、成人が1日に必要とするビタミンD量の 5.5 μgを生成するのに必要となる紫外線照射時間は、国立環境研究所と東京家政大学の共同研究によるものがよく引用されていて、以下のとおりです。

緯度や季節によって、かなり変わるのが分かりますね。
東京のいまの時期のお昼頃なら、3分半でいいんですよ!
照射する皮膚面積は、大人の両手の甲と顔を合わせた面積に相当する600 cm2です。
もちろん「顔はイヤ」という人は他の部分を露出しても構いません。
このビタミンは脂溶性ビタミンなので、油と一緒に吸収されます。
よくサプリで摂っていても血中濃度が上がってこない患者さんがいるんですけど、これは脂質の吸収がうまくいっていないことが原因の場合が多いんです。
だからサプリでも食材でも油と一緒に摂ると効果的なので、特にサプリで摂る場合には食事の前後に摂るようにしてみてください。
多く含まれる食材は、脂の多い魚類です。
サーモンとかがオススメですね。
椎茸にも含まれていますけど、天日で干していないものは含有量が少ないので注意が必要です。
ビタミンDの過剰摂取は、高カルシウム血症や腎障害を引き起こす可能性があるたので、サプリメントなどで過剰摂取しないように注意が必要ですが、そのためにはDと一緒にビタミンK(正確にはK7)を取ることが大事です。
ビタミンDとビタミンKを一緒に摂ると、Dの過剰症が防げるんです。
もっとも、海外から取り寄せるサプリは、ほとんどがD&Kになっているので、一応そのあたりを確認してみてください。
いつ書いているように、これさえ摂れば長生きになりますっていう魔法のビタミンではないので、くれぐれも普段の食事や生活にも気を配ってくださいね。
今回はこの辺で。
暑さが厳しいですから、くれぐれもお身体をお大事に。