最近よく「四毒抜き」という言葉を聞くようになりました。
栄養療法の側面から少し言っておいた方がいいこともあるし、そこには色々な問題が含まれているので、食事に関して書くのにもネタとしてちょうどいいと思ったので、取り上げてみることにします。
最初に結論めいたことを書いてしまうと、そもそも僕がいつも思うのは、単純化してそれを万人に適用すると、そこには必ず問題が生じるということです。
単純だと分かりやすくて、特に面倒なことを避ける傾向にあるいまの世の中では受け入れやすいので、その面でのプラスはあるかもしれないけれど、僕にはちょっと雑に感じられちゃうんです。
僕がやっている分子栄養学は、個別性を重視して、それぞれ患者さんの根本的な原因を見つけて対処するという考え方が基本にあるので、そこが従来の栄養学とか標準医療と違うところで、僕が気に入っているポイントなんです。
ちょっと前置きが長くなりましたが、今回は「四毒抜き」について書いていきます。
毒とは何のことか?
最近流行っている「四毒抜き」の「四毒」とは、「小麦、植物油、乳製品、甘いもの」のことらしいです。
これを食事から抜くことで、いろいろな病気が治ったり症状が改善したりするらしいんです。
まあ、確かに体調が良くなる人もそれなりにいるかもしれませんけど、ツッコミどころが満載な感じです(笑)
ここでちょっと、僕の専門でもある東洋医学的なお話から入っていきたいと思います。
東洋医学で毒というと、西洋医学における毒物とは違って、生体の正常な生理機能を阻害している状態のことを指します。
特に、体内の水分代謝が乱れた「水毒」や、血液の異常である「血毒」、そして気の循りの異常である「気毒」の三毒が一般的で、これに「食毒」を加えた場合を四毒というので、たまに見かける「四毒抜きは東洋医学でいう毒を抜くこと」みたいな表現は、かなり間違ってるかなと思います。
食毒は消化不良や過食、便秘などによって胃腸に食物が停滞し、腐敗することによって生じた毒のことですね。
これらはすべて滞り、つまり循りが悪い状態のこと。
これは、治し方は多少違いがあるかもしれないけれど、分子栄養学的に診ても問題なところは共通しています。
次以降では、四毒抜きの毒について、ひとつずつ取り上げていきます。
小麦について
確かに小麦に含まれるグルテン(特にグリアジン)は難消化性のタンパク質なので、腸内環境を悪化させるし、さまざまな病気の原因になる可能性はあります。
でも「小麦が全部悪い」とか「グルテンフリーにすれば大丈夫」みたいな考え方は単純すぎてちょっとイヤですね。
本当に誰にとっても小麦が悪さをするなら、こんなに長いこと(少なくとも1万年以上)小麦を食品として摂ってはいないだろうと思うんです。
もしかすると、近年の小麦の品種改良とかが悪さをしているのかもしれないです。
小麦については、2週間ぐらい止めてみて、体調が変わるかどうかを観察してみるといいです。
止めて体調が良くなったら、それは小麦が原因だということになるので、しばらく食べないようにすればいいだけです。
体調が回復したらまたちょっと試しに食べてみて、悪化するかどうかを確かめればいいんですね。
以前の記事を参考までに挙げておきますね。
植物油について
「植物油抜き」については、ということは油を植物油と動物油に分けて避けているらしいところが大雑把すぎて笑えます。
なにごとも、きちんと分類して適切に選択することが大事だと思っています。
油については植物性の油に多く含まれているのは不飽和脂肪酸。
これは一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられて、多価不飽和脂肪酸はさらに代表的なものとしてオメガ9系、オメガ6系とオメガ3系などに分けられます。
さらにオメガ6系とオメガ3系の中にもいろいろな種類の脂肪酸が含まれていて、それぞれ体内での作用が違うんです。
そしてこのオメガ6系とオメガ3系の脂肪酸は、体内でつくることができない必須脂肪酸ですから、食品から摂らなければいけません。
そういったことをすべて無視するように「植物油を抜け」という一言で済ませてしまうのは、健康のためにはならないと言わざるを得ません。
前回も書いたんですけど、面倒なことがイヤなひとは、予防とか健康とかを手に入れることはできないと思うんですね。
これについても過去記事を載せておきます。
乳製品について
このブログでもよく書いているように、確かに牛乳を飲む意味はないとは思います。
過去の記事が2つあるので、こちらを読んでみてください。
乳製品を控えるべきは、カゼインのこと、カルマグバランスのこと、乳糖不耐症のことなどがその主な理由です。
ここをまた書くとさらに長くなってしまうので、以前のブログ記事に譲って、ここでは省略したいと思います。
付け加えておくと、カゼインという意味では、バターにはあまり含まれていないので悪くないということになりますね。
甘いものについて
これも図式としては上に書いた内容と同じですね。
つまり糖質についても分けて考える必要があるということ。
ひとことで言えば、単純糖質(単糖類・二糖類)と多糖類の区別をして、前者を控えて、後者は適量摂るということが大事です。
なによりも、甘いという味覚がうまいとイコールになっているのは問題だと思っています。
だからドンドン、食べ物が甘くなってきているんでしょう。
その味覚の鈍感さに危機感を覚えるのは僕だけでしょうか?
それだと、五味をすべて含む食べ物だといわれる僕の好物の「ほや」なんて、美味いと思い人がいなくなっちゃうのかもしれませんね。
いろいろと突っ込んでみましたが(笑)、言いたいことはひとつ。
単純化してそれを万人に適用すると、そこには必ず問題が生じるということです。
大雑把な考え方で治るほどヒトは単純ではありませんので、キチンと専門家にカラダを診てもらうことは大事だと思います。
今回はこの辺で。