なぜ「東洋医学×分子栄養学」で診ると見えるものが変わるのか?

東洋医学×分子栄養学

「一生懸命やっているのに、なぜかうまくいかない」というあの感覚

健康診断はいつも正常。
食事にも、それなりに気をつけている。
睡眠時間だって、無理のない範囲で確保している。

それなのに、なぜか体が軽くならない。

「もっとがんばれば変わるはず」と思って、あれこれ試してみる。でも、何をやっても手応えがない。そのうち、「これはもう自分の体質だから」と、静かに諦めてしまう——。

そんな感覚に、心当たりはないでしょうか。

もしいまそう感じているなら、もしかしたら、がんばりが足りないのではなく、見ている場所がひとつだけだったのかもしれません。

今回は、私が「東洋医学ドック」という形で大切にしている考え方——東洋医学と分子栄養学、この二つを重ねて診るとなぜ見えるものが変わるのか、という話をゆっくりお伝えしたいと思います。

東洋医学が診ているもの——「巡り」と「体質」という視点

東洋医学は、体を「気・血・水」という3つの要素の巡りとして捉えます。

たとえるなら、体を一本の道路網のように見るイメージです。
西洋医学の検査は、その道路の「舗装の状態」や「信号の故障」を細かくチェックするのが得意です。一方、東洋医学が見ているのは、そこを流れる車の量や速度——渋滞しているのか、逆にガラガラで機能していないのか、という「巡りそのもの」です。

道路自体には異常がなくても、渋滞していれば街全体の動きは滞ります。
これが東洋医学でいう「気滞」や「瘀血」のようなイメージです。
逆に、そもそも流れる水の量が足りていなければ、どんなに道が整っていても潤いは届きません。
これが「血虚」や「陰虚」に近い状態です。

さらに東洋医学では、同じ「疲れやすい」という訴えでも、その人がもともと持っている体質——気が不足しやすいタイプなのか、血が不足しやすいタイプなのか、巡りが滞りやすいタイプなのか——によって、見立ても対処も変わってきます。

つまり東洋医学は、数値そのものよりも、その人固有の「巡りのクセ」や「体質の傾向」を診る視点を持っているのです。

分子栄養学が診ているもの——「数字の奥にある身体の仕組み」

一方、分子栄養学が診ているのは、体の中で実際に何が起きているかという、より細かい仕組みの部分です。

たとえば、一般的な健康診断の「基準値内」というのは、「今すぐ病気の治療が必要かどうか」を判断するための線引きです。
けれど、これは必ずしも「体が最も元気に働ける状態か」を示すものではありません。

車のガソリンメーターにたとえるなら、病院の基準は「エンプティランプが点灯するかどうか」。
分子栄養学が見ているのは、「快適に走り続けるために、どのくらい入っていれば安心か」という、もう一段階細かい目盛りです。

フェリチン(貯蔵鉄)、活性型ビタミンB群、コルチゾールの日内リズム、ミトコンドリアでのエネルギー産生——こうした指標は、一般的な検査項目には含まれないか、含まれていても「基準値内」で片付けられてしまうことがほとんどです。

けれど実際には、この「基準値内だけれど最適ではない」領域にこそ、慢性的な不調の理由が隠れていることが少なくありません。

分子栄養学は、「なぜその不調が起きているのか」を、栄養素と体の仕組みのレベルで説明する視点を持っています。

二つを重ねると、何が見えてくるのか

ここが、今日いちばんお伝えしたいところです。

東洋医学だけで診ると、「気虚ですね」「血が不足していますね」というところまでは分かっても、「なぜそうなっているのか」という根拠が見えにくいことがあります。
感覚的には納得できても、理屈で腑に落ちないまま終わってしまう。

逆に、分子栄養学だけで診ると、「フェリチンが低いですね」「ビタミンB群が足りていませんね」という事実は分かっても、「その人らしさ」——なぜこの人はこの栄養素が不足しやすいのか、どんな生活パターンやもともとの体質がそこに影響しているのか——という部分が、数値の羅列の中に埋もれてしまいがちです。

以前、慢性的な疲れに悩んでいたAさんのケースをご紹介したことがあります。
血液検査は「異常なし」。でも分子栄養学の視点で見直すと、貯蔵鉄やタンパク質の利用、ビタミンB群の消耗といった「エネルギーを作るための材料不足」が見えてきました。
そして同時に、東洋医学の視点からは、Aさんがもともと気血ともに不足しやすい体質であることも分かりました。

栄養素の不足という「事実」と、なぜその人がその状態に至りやすいのかという「文脈」。
この両方が重なったとき、初めて「この人にとって、本当に必要なこと」がはっきりと見えてきます。

東洋医学だけでは根拠がぼんやりとし、分子栄養学だけではその人らしさが抜け落ちる。
重ねて診ることで、ようやく「その人固有の答え」にたどり着ける——これが、二つを掛け合わせる意味だと感じています。

東洋医学ドックでやっていること

この考え方をそのまま形にしたのが、「東洋医学ドック」です。
具体的には、次の3つを組み合わせて診ています。

  • 血液データ:一般的な基準値だけでなく、分子栄養学の視点から数値の奥にある体の仕組みを読み解きます
  • 食事記録:1週間分の記録をつけていただき、何を食べているかだけでなく、それがきちんと巡り使われているかという視点で見ていきます
  • 問診:東洋医学・分子栄養学の両方の視点から、体質や巡りの傾向、いまの不調が体のどのバランスの乱れから来ているのかを丁寧に伺います

この3つを重ね合わせることで、「検査は正常なのに不調が続く」という、これまでどこに相談しても答えが見つからなかった状態にも、その人固有の理由と、その人に合った食事・栄養・生活習慣の見直し方が見えてきます。

これから、このブログで伝えていきたいこと

今後このブログでは、実際のケースを通して、この「東洋医学×分子栄養学」という視点がどんな不調にどう活きるのかを、少しずつご紹介していきたいと思っています。

急に何かが劇的に変わるわけではありません。
けれど、自分の体を「これまでとは違う角度から知っていく」というプロセスそのものが、これまでの「がんばっているのに報われない」という感覚を、少しずつ緩めてくれるはずです。

次回以降も、具体的なケースを通してお伝えしていきますので、よろしければまた読みにいらしてください。

もう一歩、患者さんの力になりたい方のために

理学療法士や看護師として臨床に携わる中で、「もっとこの人の力になれるはずなのに」というもどかしさを感じたことがある方は、少なくないと思います。

構造や機能へのアプローチだけでは届かない領域——それが、今日お伝えした「巡り」と「栄養の仕組み」を重ねて診る視点です。
この視点を身につけることは、既存の臨床の枠を超えて、より本質的に患者さんの力になれる可能性を広げてくれます。

現在、この統合的な診方を体系的に学べる場として、中医統合ケアアカデミーの準備を進めています。
詳細は追ってお知らせしますので、ご関心のある方はぜひ楽しみにお待ちください。

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